9月11日、三越銀座店が売り場面積を1.5倍に拡張し増床オープンする。統合後、リストラ続きだった三越伊勢丹ホールディングスにとって初めての開発案件。統合効果が問われる案件だけに失敗は許されない。この増床で大きく変わる銀座勢力図を前に周辺の百貨店はさまざまな対抗策を打っている。
「現在、百貨店は終わったといわれている。今回の増床リニューアルで、お客様の支持を得られるかどうか。われわれの商品やサービスが正解なのか一つの答えを出したい」。会見の席上、石塚邦雄・三越伊勢丹ホールディングス社長は、百貨店限界論を打破すると宣言した。
9月11日の三越銀座店の増床オープンには、“背水の陣”で臨む構えだ。
売り場面積はこれまでの1.5倍の3.6万平方メートルとなり、隣の松屋銀座本店の3.2万平方メートルを凌ぐ。「売り場面積で抜くのだから、当然、売上高でも1番を目指す」(三越幹部)。2009年の売上高は428億円であるのに対して、増床オープン初年の売上高目標は630億円を掲げた。松屋銀座本店の563億円(09年実績)を抜く数字だ。
三越銀座店は、ピークの1990年には売上高が760億円あり、かつては百貨店売上高で銀座エリア1番店だった。しかし、04年に松屋に逆転されて以降、トップは松屋が独走してきた。
地域1番店と2番店では、「取引先から集まる情報量や商品供給、客の流れに差がつく」(百貨店幹部)。ゆえに1番店をめぐる争いは熾烈を極める。
今回の三越銀座店の増床は、三越伊勢丹グループにとって大きな意味を持つ。
まず、三越にとっては構想から32年にわたる長年の悲願だった。総事業費420億円を捻出するために池袋店の閉鎖・売却に踏み切ったほどだ。
また、伊勢丹との統合後初めてのビッグプロジェクト。百貨店業界で随一といわれる伊勢丹の商品調達力や商品政策を三越で生かせるか、まさに統合成果が問われる案件だ。
そして、ここで成功し、次の大型プロジェクトになるJR大阪三越伊勢丹の来春オープンにつなげたい。
食品を地下2階に下げファッション性を強調
Photo by Toshiaki Usami
三越銀座店増床の最大のポイントが「2館一体化増床」だ。都市再生特別地区の指定を受けて、3階より上階は、本館と新館が1フロアでつながる。この一体化増床は、東京都内の百貨店では初めてのケース。ブリッジでつなぐだけよりも回遊性が高まり、きわめて有利な建物構造だ。
この認可を受けるために、さまざまなところで公共性に配慮した。