日経平均6万円突破か減速か 攻めと守りの投資術#2写真:野口 博(FLOWERS)

3月以降、乱高下が続く日本株だが、資産900億円の“伝説の投資家”清原達郎氏は今の日本株をどう見ているのか。特集『日経平均6万円突破か減速か 攻めと守りの投資術』の#2では、清原氏に「現役であった場合の具体的な投資術」や「割安小型株の魅力」「中長期では必ずしもネガティブではない理由」などについて直撃。清原氏が得意とする「底値買い」や「ナンピン買いによる利益最大化」についても具体的な考え方を聞いた。波乱相場で資産を拡大してきた清原氏からのメッセージ、ぜひ参考にしてほしい。(聞き手/ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

「伝説のサラリーマン投資家」――。ヘッジファンド運用で驚異的な成績を挙げ、今なお語り草となっている清原達郎氏。

マンガ書影:清原達郎わが投資術1きよはら・たつろう/1981年野村證券入社。その後、モルガン・スタンレー証券やスパークス投資顧問を経て98年、タワー投資顧問で基幹ファンドを立ち上げ。2005年発表の最後の高額納税者名簿(長者番付)で全国トップに。初の著書『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)は25万部突破。26年3月には『マンガ 清原達郎 わが投資術 1 市場は誰に微笑むか』を上梓。4月、5月には2巻、3巻が発売予定。

 簡単に経歴を紹介すると、清原氏は野村證券や米ゴールドマン・サックスなどを経て、1998年にタワー投資顧問に移籍。同年に基幹ファンド「タワーK1ファンド」を立ち上げ、引退した23年まで運用を行っていたが、そのパフォーマンスは25年間で実に93倍に上る。

 引退後の2024年には同氏初の著書『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)を発売。投資本としては異例の25万部のベストセラーとなるなど、金融関係者や個人投資家からの注目度は圧倒的だ。

 そして26年3月には『マンガ 清原達郎 わが投資術 1 市場は誰に微笑むか』を上梓。1巻では清原氏が若き日に在籍した野村證券、ゴールドマン・サックスでの出来事を中心に、当時の金融業界を振り返りながら、タワー投資顧問でタワーK1ファンドをスタートさせるまでが描かれている(下参照)。

マンガ『マンガ 清原達郎 わが投資術 1 市場は誰に微笑むか』/講談社。第1巻では若き日の清原達郎氏が描かれている。赤裸々に描かれた「回転売買」「腐れ玉のはめ込み」など当時の証券会社の裏側も必見だ。 拡大画像表示

 清原氏の投資術はヘッジファンドを引退後も健在である。24年8月、25年4月の急落時には得意の「底値買い」で銀行株などを100億円単位で買って、大きな利益を獲得した(詳しくは特集『二番底か高値奪還か 最強株で勝つ!』の#1【“資産800億円”清原達郎氏が語る、「スイッチが入っちまった」株価暴落当日のリアルトレードと「パニック相場のセオリー」】参照)。

 そこでダイヤモンド・オンラインでは、清原氏に「日本株の見通し」や「個人投資家が取るべき戦略」について直撃。強気と弱気で大きく揺れている日本株だが、伝説のサラリーマン投資家はどう見ているのだろうか。(清原氏は咽頭がんの手術で声帯を失っており、質疑は書面ベースで実施した。インタビューの回答は2月28日付で受領。インタビュー中の株価指標等は2月末時点)

星は燃え尽きる前に最も輝く
今後、日本株を買う可能性はほぼゼロ

――昨年、幣媒体でインタビュー(25年3月)をさせていただいた後、日本株は大きく上昇しました。この一年の日本株を振り返っていただけますでしょうか。

「星は燃え尽きる前に最も輝く」――。

 これが日本の株式相場についての私の正直な感想です。私は2023年にファンドの運用から引退したとき、これからも現役の時と同じ生活をするものと思っていました。なぜなら自分の資産を運用しなければならないからです。

 しかし、いざ引退してみると自分がもう株式市場に興味がないことに気が付きました。現役時代は顧客がいたからこそ頑張れていたのです。

「新規の株式投資はもうやめよう」と心に決めていたつもりでしたが、下のチャートのAで示される24年8月4日とBの25年4月7日の二日だけ合計でメガバンク株を中心に百数十億円の日本株を買い付けました。

 暴落を見て手が勝手に動いたんです。「俺はいったい何をやってるんだ!俺はギャンブル依存症のジジイってことか!」と後で反省しました。

 まだ「残り火」がわずかばかりあったということなのでしょう。この二日で買った大型株は今年の1月に全株売り切りました。

 ファンドを終了するときに私が個人で引き取った中小型株についても、事情があって売れない株以外はほぼ全部1月と2月に売却しました。

 仮にまた暴落が来て株価が3割下がっても、日経225は4万円になるだけですから、私が手を出したくなるような安いレベルではありません。私が今後日本株を買う可能性はほぼゼロでしょう。

――市場では、日経平均株価6万円も通過点というような強気の声と、割高過ぎるという弱気の声が交錯しています。直近は米国とイランの問題で調整していますが、清原さんとしては「まだまだ日本株は高過ぎる」と。

 確かに私は相場が危険水準にあると考えています。ただ持ち株の大部分を売ってしまったのには「私の年齢」が深く関係しています。

 今、私は67歳ですが、すでに「終活」に入っています。70歳過ぎるといつ死ぬか分からないのであと2年以内に残りの中小型株も売り切ろうと思っています。

 私は70歳以上の高齢者がここまで値上がりした日本株を持つ理由など全くないと思います(株式投資が趣味の人は別ですが)。さっさと売って現金化すべきです。

――では、清原さんが現役世代であったらならばどうされますか。

 もし私が30代でプロの投資家でなかったら……、NISA(少額投資非課税制度)で日本株のインデックスファンドに無理のない範囲で積み立て投資をしていたと思います。日本株が上がり続けてもいいし、万が一暴落したらそこでも買えるわけですから。

 年齢というのは株式投資において無視できないファクターです。30歳で200万円のNISAの残高があったとしましょうか。現金は50万円持っていたとします。この人のキャッシュ比率は20%です。

 でも見方を変えれば、あと30年働いて、その間40万円を毎年NISAで投資をしていくとすると、将来の投資余力は1200万円になります。仕事を続けられなくなったり、大きな支出が必要になったりするリスク、また金利を考慮すると1200万円の投資余力というのはいささか楽観的過ぎますが、仮に半分の600万円だったとしてもこれを計算に入れるとこの若者の現金比率は76%にもなります。

 収入のない老人が2000万円を株式に投資をして、500万円の銀行預金がある場合、キャッシュ比率は20%のままです。若者と老人のリスク許容度には大きな差があるのです。

 相場の見通しについては全く分かりません。このまま相場が上がると、どこかで大きく下がるのでしょうけれど、それがいつになるのかは私にはわかりません。

 現役時代に相場のピークを当てようとしてバスケットで空売りを仕掛けたことがありますが、ことごとく失敗。合計で700億円の損失を被りました。いずれも空売りのタイミングが早過ぎました。

 だから今回も「ピークだ!」と思っても間違いである確率が高いのです。上のチャートのCとDは一応短期的なピークですが私には全く予想できませんでした。

 相場全体のピークを当てるより、個別銘柄のピークを当てる方がはるかに楽です。また、AとBで私が大量に日本株を買ったように相場全体のボトムを当てるのはもっと簡単です。

 じゃあ「おまえがまだ“現役のプロ”だったらどういうポジションを取っていたのかを教えろ」と言われればこう答えます。

次ページでは、清原氏が現役のプロだった場合の「銘柄選びやポートフォリオ構築術」を具体的に解説。さらには、「中長期では相場に必ずしもネガティブではない理由」や「割安小型株の見つけ方」、「ナンピン買いが重要な理由」「漫画で伝えたい事」なども聞いた。清原氏自身の過去の失敗も含め、波乱相場で参考になるアドバイスが満載のロングインタビューをお届けする。