民主党予備選でのバーニー・サンダース氏の躍進は、圧倒的な知名度と経験を誇るヒラリー・クリントン氏の“不人気ぶり”を露呈することとなった。

 スーパーチューズデー(3月1日)前日のバーニー・サンダース氏の集会。マサチューセッツ州ボストン市の郊外にある高校の体育館は、政治家の演説会場というより、音楽のライブ会場に近い雰囲気だった。

 入り口には警察官がいて、荷物検査や手を上げて身体検査をされるが、体育館の中に入ると、スマートフォン片手に、友達と自撮りをしたり、YouTubeを見たりしながら、大学生や高校生がサンダース氏の登場を待っていた。選挙演説会の堅苦しさは全くない。あちこちから自然発生的に「バーニー! バーニー!」の掛け声が上がり、2000人を超える来場者の声がこだまし、一種の熱気すら感じられる。

 サンダース氏も74歳の年齢を感じさせない。壇上に登るや、上着をさっと脱ぎ捨て、手を上げて声援に応え、こう訴え掛けた。「授業料を無償にする!」「革命を起こそう!」。そのたびに、若者から大きな歓声が上がった。

 「バーニーだけが本当に自分たちのことを考えてくれている」。20代のスティーブさんは集会に来た理由をこう話した。

 会場を見渡すと、高齢者や家族連れも多い。

「前の大統領選ではオバマに入れた。ヒラリーが嫌なの」。80歳を超えた父親を連れて集会に来ていたエミリーさんは、サンダース氏の缶バッジをいくつも服に着け、笑った。

 結局、マサチューセッツ州でサンダース氏は惜敗したが、後述するように、ミシガン州では大逆転で勝利。直近に行われたアラスカ、ハワイ、ワシントン各州でも3連勝と勢いは衰えていない。

 3月28日時点でクリントン氏、サンダース氏の獲得代議員数はそれぞれ1712人、1004人とクリントン氏が優勢ではあるが、予想より苦戦している状況だ。

クリントン氏の経験や実績が弱みになった

 そもそも、サンダース氏とはどのような人物なのか。下図で示したように、大工や作家などを経て上院議員になった変わり種で、民主社会主義者を自任するアウトサイダーだ。本来、ここまで支持を集めるような候補ではない。そのサンダース氏の躍進の原動力になったのが、若者層の不満と既存のエスタブリッシュメント(支配階級)への反感だ。

Photo by T.S.
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