会社の人事課や健康相談室などから紹介され、とりあえず休職扱いにするためには、診断書が必要という意向を反映している可能性もあるだろう。

「町医者としては、日々、その辺の葛藤もあります。結局、精神医療の現場では、レントゲンで心が見えるわけでもなく、基本的には問診が中心。本人が“つらい”と訴え、“夜、眠れない”“朝になると、いろいろな症状が出てくる”など、問診である程度所見が認められれば、診断書を書かざるを得なくなる。しかし、それは、嘘ではない。診断書を出せば、堂々と会社を休めるわけです」

 岡田先生は、そんな「疾病利得」の心理機制が働いて、外来者には「どこかで病気と認められたい」「引きこもっている理由を探したい」という傾向があるのだろうと推測する。こんな閉塞的な時代状況の中で、日本の社会には、いわば“病気になりたいシンドローム”のような空気が蔓延しているのかもしれない。

「こうしたバイアスを調整しなければ、引きこもりの人の中に、どのくらいの人が治療を必要としているのかという実態をつかむのは、難しいのではないか」
と、岡田先生は説明する。

 厚労省としても、これまでも個別の疾患で引きこもりに対応してきたということにしておいたほうが、「引きこもり問題を放置してきた」といった、やっかいな責任問題には飛び火しない。そんな思惑も、何となく透けて見えてくる。

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7月10日に発売された拙著『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)では、このように、いまの日本という国が、膨大な数の「引きこもり」を輩出し続ける根源的な問いを追い求め、当事者や家族らの語る“壮絶な現場”をリポートしています。ぜひご一読ください。