戸籍上は100歳以上となる高齢者が過去に死亡していた事件が相次いで報道されて以来、常識的に考えれば到底生存しているとは思えない“超高齢者”の戸籍が、全国の自治体で続々と発見されている。なかには、年金の給付対象となる住民登録まで行なわれた幽霊戸籍が置かれ、すでに死亡した高齢者に振り込まれる年金を遺族が受給していたケースもある。実はこの問題、100歳以下の高齢者についても波及する可能性がある。日本のイメージが「長寿大国」から「安否不明大国」へと一転するなか、高齢者所在不明問題の深淵に迫る。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

元市役所職員が明かすズサンな戸籍管理
所在不明の「超高齢者」が全国に続出!

「『ズサンなお役所仕事』の一言で済まされる問題じゃない。公務員の中には、こうした事態が起こり得ることを薄々察していた人だって少なくないはずですよ。誰も改めようとしない膨大な戸籍データは、実質ブラックボックス化していましたからね。150歳を超える老人がぼろぼろ出てくるなんて、もはや笑い話です」

 そう語るのは、静岡県在住の元市役所職員。これは言うまでもなく、現在全国で相次いでいる「高齢者の所在不明問題」についてのコメントである。

 問題の発端は、7月末に東京都足立区の自宅で戸籍上111歳となる男性が白骨遺体で見つかり、30年前に死亡していたことが発覚したことだ。続いて、都内最高齢とされる杉並区の113歳の女性が所在不明になっていることが報じられた。

 これらを受けて各自治体が調査を進めた結果、所在不明や安否がわからない100歳以上の高齢者が他にもいることが次々に判明。騒動は予想以上の広がりを見せている。

 実際、全国の自治体において住民登録されている高齢者の数字をざっと追ってみると、「100歳以上の高齢者が、日本に本当にこれだけいるのか?」と目を疑ってしまう。110歳以上は高知県で397人、函館市で1005人、100歳以上は九州・山口でなんと1万5000人を超えるという。これらはあくまで一例に過ぎないが、足立区や杉並区のケースを考えても、これだけの高齢者が生存しているとは信じ難い。