ユニ・チャームの社長に就任以来、海外市場の開拓をテコに約15年間で売上高を約3倍に伸ばした高原豪久社長。急成長を支える人材育成の秘密に興味が湧きますが、意外にも「人は育てられない、勝手に育つもの」というのが持論で、育ちたいと願う人がみずから成長できる環境や仕組みづくりに注力されています。その一貫として日ごろ社内で徹底してほしいと思われている行動原則について、著書『ユニ・チャーム式 自分を成長させる技術』から一部を紹介していきます。

 ビジネスにおいては、成功するまで粘り強く取り組む姿勢が重要です。

「思いつくには1の力、実行するには10の力、成功するまでやめないには100の力」という言葉で、私はこれを社員に伝えています。アイデアを実行に移すには、アイデアを思いつくまでにかけた労力の10倍が必要で、それを成功させるにはさらにその10倍の労力が必要になるという意味です。

ユニ・チャーム高原社長も常に意識している<br />ビジネスを成功に導く「1→10→100」の努力法則アイデアを出す力が「1」とすれば、それを成功させるには「100」の力が必要なんだ、と最初から肝に銘じて準備する!

 アイデアを出すだけなら多くの人ができることでしょう。しかし、その段階ではまだ具体的な成果はあがっていません。

 次に、そのアイデアの実行です。製品開発であれば具体的なスペックを開発すること、営業なら得意先と商談を始めるといった段階です。ここまでに至るには、自分のアイデアを披露し周囲の人たちから賛同を得て巻き込み、密なコミュニケーションを取るなどのさまざまな過程を経なければなりません。それには、アイデアを思いつくまでに費やした努力のさらに10倍くらいの研鑽が必要なはずです。

 でも、そこで終わりではありません。行動を始めたのち、またさまざまな障害に出合い、諦めずにそれを克服して成功までもっていくには、さらに10倍の努力が必要になります。

 この点は経営者なら誰でもが実感していることではないかと思います。というのも経営者はアイデアを出したり、それを実行するだけでは評価されません。経営者はそれを成功させ、業績の向上という具体的な成果が出て初めて評価されるものだからです。

 ある国に新たに参入するときのことを考えてみて下さい。参入するまでの準備にかかる労力が1とすれば、その国の業績が黒字転換するまでの労力は10、さらに累損を一掃できるまでの労力は100にのぼるでしょう。この「1→10→100」の法則は、成功するまで諦めない姿勢を促すだけでなく、経営者の視点でものを考える習慣を身につける意味もあるのです。実際、私はこの法則を常に頭に置いており、よいアイデアを出たときは、成功までにこれまでの100倍のエネルギーが必要になることを覚悟するようにしています。

 あなたはアイデアを思いついただけで満足していませんか。あるいはそのアイデアを実行、つまり製品化したり戦略化するだけで充足感に浸るようなことはなかったでしょうか。

 もちろん、それだけでも大変な努力が必要だったと思いますが、ビジネスではその段階では成功とはいえません。成功と呼ぶためにはそれまでの努力をさらに上回る努力が必要となることを知っておいてほしいと思います。