「お前ら、みんなタダ乗りだ!」と
社員にハッパをかける上司は正しいか?
先日うかがった話だが、某企業の一部門で、「フリーライダー」や「タダ乗り社員」という言葉を覚えた上司が、フロアの社員全員に向かって「お前らみんなフリーライダーだ! 給料もらってるならそのぶん働け!」とハッパをかけたそうだ。
社員は白けた雰囲気で上司の言葉を受け流し、個々の業務に戻っていったという。
ちなみにこの上司は、真面目で有能、いつも会社のことを考えている人で、いわゆる本人が「タダ乗り」しているような上司ではない。たぶん彼からすると、部下の働きぶりに大いに不満があるのだろう。それがこのような言葉になったのかもしれない。
しかし、フリーライダー問題の解決のためには、この上司の言動に何の意味も効果もないことは、直感的にわかるだろう。
筆者がかつて米国の大学院で社会学を専攻していたころ、ある教授がこんなことを語っていた。
「人口10万人の町で10人が失業しているならば、社会学者の出る幕はない。たぶんコンサルタントや他の誰かが、その10人をケアすべきだ。なぜなら、失業しているのはその10人に個人的な原因があるからだ。しかし人口10万人の町で1万人が失業しているならば、それは社会学者や経済学者が分析しなくてはならない、この場合、失業するのは個人の問題ではなく、社会制度、経済制度の問題だからだ。」
冒頭のケースで上司が言うように、仮にほとんどの社員が「フリーライダー」 ならば、それはその会社の業務や雇用制度に問題がある(場合が多い)。
一方で、部門の中の数人がフリーライダーならば、彼らの性格や個人的な状況に問題があるはずだ。
上司は、部下全員がタダ乗りしているという事実の理由を、「個々の社員の心がけ」にあると決めつけてしまっている。これでは、いくら声を大にしても問題は解決しないし、社員は白けるばかりだ。