ベジタリアンだったダ・ヴィンチ

レオナルド・ダ・ヴィンチ「失敗だらけの天才」の素顔菜食主義者

 この時代の人間としてはかなり珍しかったのだが、彼はベジタリアンだった。レオナルドは動物たちに大きな興味と共感を示していた。彼はしばしば、籠に入れられた小鳥を買い取っては、そのまま逃がしてやったそうだ。彼は自然の淡泊なもの、動物以外の食だけで生きていけるという発言も残していた。

 パトロンの愛人達の肖像画も多く制作した。よくレオナルドは完成しない画家と呼ばれているが、本書から彼の性格を鑑みると、それは新しい技法を常にチャレンジし続けた結果、失敗も多かったせいではないだろうか。また同時に好奇心も強すぎるので、その間作品はまた進行が止まってしまう。当時、23歳年下のミケランジェロから「仕事をほっぽり投げてしまう人」と吐き捨てられてしまうほどだったという。(ただミケランジェロ作『最後の審判』に登場する人体は、デフォルメが多くレオナルドほどの正確な表現ではない)

 ちなみに恋人同然の若い弟子への嫉妬と妬みの言葉もあり、なぜか本書を読むと、天才も同じ人間として身近に思えてしまう。

レオナルド・ダ・ヴィンチ「失敗だらけの天才」の素顔宮廷での生活

 それでも晩年に表した自然の神秘を数学的に表現した『ウィトルウィウス的人体図』には驚愕する。伸ばした四肢は、円形と方円ーふたつの基本的な幾何学的要素のどちらにも内接している。「自分の芸術を真に理解できるのは数学者だけである」の言葉よろしく、レオナルドがこの素描によって視覚化したことで、その後何世紀にもわたり、この理論は万物探求のシンボルとなった。

 ひとりの生涯の生い立ちをなぞることで人間像が浮かび上がる。もしかしたらレオナルドの天才性とは、愚直なる不屈の探求心なのでははないか。

※画像提供:パイ インターナショナル

レオナルド・ダ・ヴィンチ「失敗だらけの天才」の素顔