孝行のしたい時分に親はなし。実際に親を失ってから、もっと一緒に過ごす時間を取ればよかったと後悔している諸先輩は多い。しかし、後悔していない人たちには、ある共通点があった。1万人インタビューからわかった「媒介の法則」とは?シリーズ最新作『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』から、一部を抜粋して紹介する。
40代というのは、親との関係、子どもとの関係も30代のときと大きく変わります。親との関係においては、それまでは完全に他人事だった「親の介護」が、ある日突然にリアルな課題として浮かび上がります。
また、私もその一人ですが、地方出身で都会で働いている人は、帰省の度に自分の親が小さくなったと感じ、老け込んでいく姿を目の当たりにしては寂しい思いをすることが多くなります。
「孝行のしたい時分に親はなし」とはよく言ったもので、親が元気なうちには、その苦労やありがたみに気づかずに、それがわかるようになったときには、すでに親は亡くなっているという後悔も40代になるとグッと増してきます。実際に親を失ってから、もっと一緒に過ごす時間を取ればよかったと後悔している諸先輩は多いものです。子どもや夫婦間の時間もまったく同じです。
40代は仕事盛りの時期と、子育ての時期がピタリと重なるため、平日は夕食すら一緒に取れず、「個食」なんて言葉も生まれる始末です。休日は休日で疲れを取るためにゆっくりしたい気持ちが優ってしまって、ついつい親子や夫婦の時間を軽視してしまう人も多いでしょう。
結局のところ、頭の中では家族で過ごす時間を取りたいと思っていてもできなかったというのが、これまで後悔している世代の弁なのです。そして、働き方が変わらない限り、もしくは価値観を刷新しない限り、これから40代を迎える「イクメン」世代でも恐らく同じことが起きてしまうと思います。
偶然か意図的かは別にして、先人たちのうちで後悔していない人たちには、ある共通点がありました。それは、親や子ども、あるいは夫婦で過ごす時間を習慣化する「媒介」を持っていたことです。
例えば、O場さんのお宅では、ペットである犬が家族間の媒介の機能を果たしていました。「ゴン」という名のチワワでしたが、休日は「ゴン」の散歩がてらに一緒にいろいろな場所に出かけ、平日も「ゴン」の散歩は誰がした、ゴハンはどうしたといったコミュニケーションがありました。
また、S下さんの場合は、少年サッカーが子どもとの関係の媒介となりました。たまたまS下さんが転勤した地域がサッカー熱の高い地域で、小学生だった息子もその影響から、地元のサッカーチームに入ることになりました。
S下さんにはサッカーの経験はありませんでしたし、本音を言えば、土日の試合の引率や送り迎えが面倒くさくて、最初は嫌々息子をグラウンドに連れていっていました。はじめは一人ボーっとグラウンドで駆け回る少年たちを見るだけでしたが、徐々に他のお父さんたちと言葉を交わすようになっていきました。
そんなある日、他の子のお父さんが大声を上げて、S下さんの息子さんを一生懸命応援しているではありませんか。最初は聞き間違いかと思ったのですが、そうではありません。自分の息子ではなく、S下さんの息子さんに声援を飛ばしているのです。
そのとき、S下さんは自分自身も「そこにいていい仲間」の一員として認められているような気になりました。それから、夫婦同伴で缶ビールを飲みながら子どもたちを応援したり、子どもたち抜きで夜に宴会するようになったりと、子どものサッカーつながりの家族コミュニティーが成立していったのです。
サッカーチームのお父さんとは毎週顔を合わせますし、少なくとも月に一回は定例の宴会をしていました。夏の子どものサッカー合宿に合わせて、自分の夏休みも取っていたくらいです。少年サッカーのおかげで、子どもとの時間、夫婦の時間に満足感を持つことができたのです。