O場さんの場合は犬、S下さんは少年サッカーが媒介となって、子どもや夫婦、家族との時間の年輪を刻んだわけですが、この「媒介の法則」は、親との時間でもまったく同じことがいえます。親との時間で最も媒介になりやすいのは、やはり孫です。子どもの幼稚園や小学校の運動会、中学校の入学式などでジイジ、バアバを見かけることが多くなりました。
私の息子が入学した都内の一貫校の入学式では、ジイジ、バアバ連れが予想以上に多く、会場のイスが足りなくなって、あわててイスを増設していました。そのときには正直、奇異の目で見ていましたが、考えてみたら、孫を媒介にして親との時間を共有することもできているわけです。
また、都内に住むT中さんは、ゴルフを媒介にして親との時間をつくるようにしていました。北関東の実家には母親が一人で住んでいましたが、それまでは盆、暮、ゴールデンウィークの年三回、家族で帰省する程度でした。
しかし、あるとき母親が随分と小さく見えて、特に持病があったわけではありませんが、母親と死別する「Xデー」というものをリアルに感じ始めてしまったといいます。
そこで母親と一緒に過ごす時間を増やそうと、定期的に実家に帰れるような理由を考えたのです。T田さんは実家近くのゴルフ場の会員券を10万円で買いました。これには伏線があって、以前、同じような境遇の50代の男性が、週末に千葉の実家で一人暮らしをする母親を訪ね、一週間分の食事を用意して、翌日はゴルフをして東京に戻るのを習慣にしているという話を聞いていて、その方法にあやかったのです。
もちろん、T田さんの母親は元気でしたので、母親に代わり、家の周りや畑の草を刈ったりする力仕事以外は特に何もありませんでしたが、月一回以上のゴルフと、母親との時間を週末の過ごし方に組み込んでいくと、以前より母親が元気になったように見えるのでした。