牛丼業界を引っ張ってきた吉野家の不振

「牛丼、一筋(ひっとすぅじぃ)、80年(はっちじゅうね~ん)」

 およそ30年前のCMですが、このメロディーが頭に残っている方も多いのではないでしょうか。

 一度、経営危機を経験することはありましたが、その後見事に立て直して「牛丼」という市場を創り、牽引してきたのが吉野家です。「牛丼を食べに行こう」というときも、吉野家だけは「吉牛(よしぎゅう)食べよう」のように言われ、ある意味、消費者からブランド的な認知をされてきました。その背景には「やっぱり牛丼は吉野家がうまい」という一般的な消費者感覚が浸透してきたことがあるでしょう。

 しかし、その吉野家が現在、不振に陥っています。2010年2月期の業績は、売上こそ1796億200万円と前年比3.1%の微増になってはいるものの、営業利益で▲8億9500万円と赤字に転落してしまいました。この数字自体は吉野家ホールディングス全体のものなので、牛丼関連事業以外の不振事業(寿司関連事業やステーキ関連事業など)も含まれています。問題なのは、主力事業である国内吉野家の既存店売上が前年比8.4%減という状況になっており、それは来店客数が9.2%も減少していることに起因している点です。

 一方、業界大手のすき家と松屋は、吉野家と比較すると堅調な業績を上げています。なぜ牛丼業界にこのような変化が起きているのでしょうか?