自分の一生を左右するかもしれない就職先選びは、昨今このようにグルメサイトで飲み屋に予約を入れるのと同じ要領で進められます。

 このように手軽な仕組みが手軽に使われるのは、「ダメなら辞めて他をあたればいいや」という意識であるからかもしれません。というより、手軽な仕組みによる手軽な職選びが、早期離職の一因になっているというのが正しいでしょうか。

 もちろん、便利な仕組みをインデックスとして活用し、就職サイト上の情報をさらに深堀りする学生もいることでしょう。興味を持った企業のOBに会いに行ったり、創業者についての著作を読んだり、というように。

 最も有益で確かな情報は書かれたものではなく、人が持っている、ということを、教えられずとも知っている優秀な学生は現実にいます。人に会って、どこにも書かれていない情報を収集するには、かなりの労力が必要です。しかし、良い情報を得るには、それなりの労力がかかることは、就活に限らない真実ではないでしょうか?

学卒が即戦力であるはずがない

 いま、企業は「厳選採用」をしていると言われます。しかし、これは変な言葉です。なぜなら、採用は本来、厳選するべきものだからです。それは質の選択です。いま厳選と言われているのは、質ではなく量の問題です。採用抑制を別の言葉で言っているにすぎません。

 企業が真実、「厳選」するだけの見抜き力を持っているなら「数的厳選」をしてもいいのでしょうが、実際には見抜き力がないから早期離職が減らないわけです。しかも、「こんな会社だとは思っていなかった」という理由で3年以内に辞めていく若手が多いことを考えると、企業が事前に提供する情報も、不足していると思われます。

 企業に対しては、就職サイトでの情報提供だけではなく、もっとリアルな情報を数多く提供する場を持つことを勧めたいと思いますし、大学生には就職サイトに自閉した情報収集をやめ、人に会い、リアルな情報を集めてほしいと思います。