確率思考を基に真っ先に取り組んだのが、ファミリー層を狙った新エリア「ユニバーサル・ワンダーランド」の建設だ。12年3月のオープン以降、長年の弱みだったファミリー層が年々増えた。

 その後、確率・統計を活用して10月のハロウィンシーズンや絶叫マシンに伸びしろを見いだし、次々に施策を打っていった。興味深いのは、絶叫マシンの充実を決めた理由だ。回帰分析によって、テーマパーク来場者の年齢別分布と男性ホルモン「テストステロン」の年齢別分泌量に、極めて高い相関性があることを突き止めたという。

 さらに、多くの層のプレファレンスを獲得するために、「映画だけのテーマパーク」からの転身も図った。人気マンガの「ワンピース」や「進撃の巨人」などと組むことで、それまでUSJの弱点だった来場者層を埋めていったのだ。

 確率思考に裏打ちされた森岡のアイデアはことごとくヒット。森岡の読み通り、多くの“小型ロケット”がハリー・ポッターのためのキャッシュマシーンに育った。

 同時に進めていたのが、ハリー・ポッターという“特大ロケット”打ち上げの成功確率予測だ。巨額の投資だが、森岡は確率・統計で需要予測を算出し、投資回収に一定の自信を持っていた。

 ただ、会社の存亡を左右する案件だったため、森岡は現ユー・エス・ジェイ シニア・アナリストの今西聖貴の元を訪れる。P&G世界本社で20年以上にわたって需要予測モデルの開発を指揮し、世界中のエリートが集まるP&Gの研究機関の中でも、異彩を放っていたという人物だ。

「ハリー・ポッター」認知率
90%超えで200万人達成

 森岡は最大級の信頼を寄せる今西の知見を頼り、自分とは別の角度でハリー・ポッターの需要予測を依頼。成功確率のセカンドオピニオンを求めたのだ。

 その後、それまで森岡と今西が独自に計算してきた互いの需要予測結果を出す日が、ついに来た。

 手のひらに数字を書いて「せーの」で見せ合う。すると、強気の森岡からは240万人、楽観的な予測で森岡が失敗しないようにと保守的に見積もった今西からは210万人という数字が出てきた。