満を持して「ハリポタ」をオープン
年間売上の半分を投じたUSJの成算
天に向かってそびえ立つホグワーツ城。石造りの建物も表面に生えている苔も、本物さながらにリアル。ひとたび足を踏み入れれば、そこはもう「魔法の世界」――。
世界的な大ヒット映画『ハリー・ポッター』の物語の世界を、圧倒的なスケールと徹底した細部へのこだわりで再現した壮大なテーマパーク「ザ・ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」が、いよいよ7月15日に大阪のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)にオープンする。
目玉は、ハリー・ポッターと一緒にホグワーツの空を飛ぶ「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」、魔法界の生き物・ヒッポグリフと一緒に空を翔ける「フライト・オブ・ザ・ヒッポグリフ」などの臨場感溢れるライド・アトラクションだ。ストリートには、魔法学校の生徒たちによる歌のハーモニーが響き渡り、パブに入れば映画でお馴染みの「バタービール」を飲むこともできる。魔法世界を疑似体験したい日本の「ハリポタファン」は、今か今かとオープンのときを待っている。
このテーマパークが2010年に米国フロリダ州のユニバーサル・オーランド・リゾートでオープンした際は、世界中のファンが殺到。その年の来場者数は3割も増えた。USJへの導入は世界で2番目となり、アジアなど近隣諸国からも集客を望めることから、USJ関係者の意気込みは熱い。
その意気込みを象徴するのが、USJにとっては前代未聞となる莫大な投資額だ。USJを運営する株式会社ユー・エス・ジェイの年間売上高は約800億円(直近2012年度は約821億円)だが、なんとその半分以上に当たる約450億円もの資金を「ハリー・ポッター」(以降、ハリポタと表記)に注ぎ込んだのだ。しかもその資金は、ほぼ内部留保で賄うという。
原作や映画の人気が世界的に高い「ハリポタ」のテーマパークの集客力は、フロリダで実証済みとはいえ、勝負はやってみないとわからないもの。またこれだけの投資額になると、コストを回収するにはそれなりの時間がかかる。意気込みのほどはわかるが、あまりにも大胆な戦略と言えまいか。
だがUSJには、この数年間、従来の価値観を大転換した斬新なイベントやアトラクションを次々に投入し、集客・業績アップを続けてきたという自信がある。なるほど、その自信のほどはデータを見ればうなずける。