「200万人は堅い」。森岡はハリー・ポッターの成功に自信を深め、「リスクが高過ぎる」という社内の猛反対も風向きが変わった。

 それでも、200万人達成のシナリオ実現は一筋縄ではいかなかった。そのためには、前述の認知率で「90%」という驚異の高さが必要だったからだ。日本全国、老若男女のほとんどが「USJにハリー・ポッターのエリアができた」ことを知っている状態にしなくてはいけないということだ。

 資金不足という悪条件も重なる中で森岡が思い付いた奇策が、本の執筆だった。USJのV字回復を記した本はベストセラーとなり、メディアを振り向かせたのだ。

 さらに、認知度90%達成のためのウルトラCも実現させた。14年4月、安倍晋三首相とキャロライン・ケネディ駐日米国大使がUSJに駆け付け、3ヵ月後となるハリー・ポッターのグランドオープン日を発表したのだ。USJは一民間企業のテーマパークだが、「日本の観光業活性化」という大義名分での働き掛けに、政府関係者が応えるかたちで実現した衝撃のマーケティングだった。

 こうした幾つもの工夫と努力を重ね、いよいよ迎えたオープン日にはメディアが大挙して押し寄せた。露出価値でUSJオープン時の10倍以上という、すさまじいPRになったという。計測上の認知度は100%にまで到達し、200万人達成シナリオも優にクリアした。