これまで説明してきたように、数字をチャート化することは基本中の基本ですが、相手に伝えたいことは数字ばかりではありません。考えを伝える時にはテキスト(文章)で表現することになります。しかし、単なる文章を書くよりも、ひと目でわかるコンセプトチャートを描くのが、近道になります。マッキンゼーの人材育成責任者として実践し、BBT大学の講座で人気の著者が、普通のビジネスパーソン向けに書いた『はじめての問題解決力トレーニング』から、エッセンスをご紹介します。
自分の考えを伝えるために文章を書くことにはみんな慣れているので、書き手は、それほど苦労をせずにすみます。では、読み手にとってはどうでしょうか。読むのに時間がかかるし、特に最近の人は長い文章を読むのが苦手になってきているとされます。
とすると、どうすればよいのでしょう。ポイントだけを箇条書きにしたり、段落を分けて説明したりするのが一般的ですが、わたしたちは絵を描いて説明します。なぜならば、人間の特性として、文章を読むよりビジュアル化された絵を見るほうが、伝わるスピードが圧倒的に速いといわれているからです。
絵によってイメージを伝え、重要なことだけを文章で表現することで、格段に理解度が高まります。このようなチャートを、コンセプトチャート(概念図)と呼びます。
パワーポイントやエクセルをはじめ、チャートを描くのに役立つアプリケーションソフトがいろいろと出ているので、有効利用しましょう。ただ、どんなアプリケーションを使うにしても、自分の考えを概念として示すためのチャートのパターンを蓄積しておくことが重要です。何か伝えたいことがある時に、説得力のありそうなテンプレートを眺めていると、考えが明確になることもあるからです。
コンセプトチャートは自分が伝えたいことを、読み手や聞き手が理解しやすいように描く必要がありますが、なかには複雑すぎて何を言いたいのかさっぱりわからないものがあります。“コンセプトチャートを描くこと”を目的にすると陥りがちな罠です。あくまでも目的は“相手に自分が伝えたいことを理解してもらうこと”だと言い聞かせておけば、こうした失敗は避けられます。
ここまでにわかったことをベースに、顕太さんの体重がなぜ増加してしまうのか、そしてダイエットのポイントはどこにあるのかまとめてみましょう。
こうした場合、「顕太さんの体重が増えるのは生活習慣に問題があるからで、その生活習慣を正すためには、食事をコントロールして適度に運動をしましょう」と、何となく当たり前なことを口頭で伝えるか、文章で表現してそれで終わりということがよくあります。
わざわざコンセプトチャートを描かなくても、それだけ言えばすむのでそれで終わらせてしまうのでしょう。しかし、それでは問題を解決することはできません。
もし生活習慣に問題があるのであれば、“なぜ生活習慣に問題があるのか?”と問いかけて、もう少し深掘りして考える必要があります。この時、無秩序に深掘りするのではなく、秩序正しく考えることが大事です。
ここでいう“秩序正しく”とは、何かのルールに従って考えていくという意味です。たとえば自分の生活習慣について考えて、時間の流れに沿って描いてみる方法などが考えられます。
“生活習慣”とは具体的に何を指すのか、分解して考える必要もあるでしょう。ひと言でざっくりとまとめずに、より正確に生活習慣を説明しようとすると、伝えなければならないことが多くなりますし、それぞれの要素が関連して1つのサイクルを描く可能性もあります。このような場合は、図表10の上にあるような円フローを使うと、よりわかりやすく説明することができます。
一方、下のチャートでは、ダイエットは1つ1つの問題をハードルのように越えていくことが大事なので、ハードルを越える様子を表したテンプレートを使っています。
このようにコンセプトチャートで表現することで、伝えたい内容をより的確に伝えられるようになります。