行政マンが昔からの制度を
ずっと続ければいい時代は終わった

 開館日は、週に4日。水・金・土・日曜の午後1時から9時まで。それ以外にも予約が入れば、相談に応じる。

 受け付けでは、町民かどうかを聞かれる以外、現在のところ自己申告制で匿名性が保たれていて、町民ではなくても利用できる。

「温かくて、優しく、何でも受け止めてくれる居場所があれば、語ることができる。自分の過去、傷ついた体験、弱い部分を語って、周りがそのまま素直に受け入れてくれれば、語るプロセスを通じて、自分で気がついていくところがある。答えは、皆さんそれぞれの心の中にあると思う。あるものを引きだしてあげるには、時間がかかったり、居場所や優しい仲間が必要だったりするのです」

 そう話す伊藤課長は、仕切ることを目的にする、いわゆる“仕切りテーター”ではない。持っているものを引き出して、その人が気づけば、動くのではないかと感じている。

 ピアハウスも、ルールを定めないままスタートした。しかし、ルールは、利用者やサポート者たちが、自分たちでルールをつくって考えていけばいい。固まってからでは後手に回る。だから先に動こうという考え方から来るものだ。

「行政マンとして、昔からある制度をずっと続けていけばいい時代ではないと感じています。住んでいる方のライフスタイルも価値観も変わっている。終身雇用制度も崩れた。正規ではなく非正規の方が増えてきている。結婚しても子どもを育てられるのか。いろんな問題がある中で、昔と同じような助成などの制度だけでは、きめ細やかな対応ができない。福祉の現場では、寄り添うという言葉を使う。寄り添うにしても、人それぞれ背景や状況が違う。本当は、1人につき、1人の職員がつくくらいのことができなければ、寄り添いはできない」

 行政の福祉サービスはどこまでやるべきなのか。引きこもっている人や社会参加のできにくい人には、少なくとも社会参加ができるようになるまでのアシストは、行政として行うべきなのではないのか?と、伊藤課長は自問自答を続ける。

 前例のない昭和町の試みは、お金がかかるということよりも、社会の受け入れ先まで一緒についていってあげるような気遣いが大事なのだと、問いかけているように思える。

問い合わせ 055-275-8784(同町福祉課)

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