大正時代から現代まで、その時代の経済事象をつぶさに追ってきた『週刊ダイヤモンド』。創刊約100年となるバックナンバーでは、日本経済の現代史が語られているといってもいい。本コラムでは、100年間の『週刊ダイヤモンド』を紐解きながら歴史を逆引きするのがテーマだ。今回は「週刊ダイヤモンド」が掲載した不動産バブル崩壊の最初期のレポートを紹介しよう。今から20年前、1990年12月である。(坪井賢一)

1990年12月、不動産バブルは頂点に達するも
株価暴落で不安は増すばかり

 連載前回のおさらいをすると、1990年、株価が下落をはじめたこの年、公示地価変動率(上昇率)は大都市圏で前年をさらに上回っている。もちろん、実勢価格(市場取引価格)は西日本で下落しているが、公示地価は上昇を続けていた。1991年、3大都市圏の公示地価は、そろって一桁の上昇率に鈍化する。1987年から4年間続いた狂乱の二桁上昇は、突如ガクンと落ちたのである。

 そして1992年、一挙に全国的な地価下落となる。「全国住宅地」▲5.6%、「全国商業地」▲4.0%。「3大都市圏住宅地」▲12.5%、「3大都市圏商業地」▲10.3%と、まさに大轟音とともに不動産バブルは崩壊した。

 1990年12月に戻ろう。この時期、不動産バブルは頂点にいたっているが、株価が暴落しているため。人びとは不安感に襲われていた。

「週刊ダイヤモンド」1990年12月15日号は、特集「東京湾岸不動産危機」と題して2本の長いレポートを掲載している。1つは住宅問題評論家・佐藤美紀雄氏のレポート「ウォーターフロントはビル余剰に沈む?」、もう1つは英「エコノミスト」誌の「来るか世界不動産恐慌」と題した記事の翻訳だ。

 まず、「エコノミスト」誌のレポート(注(1))。

「世界の主要経済国が異なった景気サイクルのもとにあるという点で(中略)、米国と英国のリセッションは、ドイツと日本の経済成長によってある程度バランスさせることができる。しかし、今もし日本の不動産市場が暴落すれば、日本経済もリセッションに落ち込むため、このたくまざる非対称は崩れる。」

 1990年当時、米国と英国は不況、日本はバブル景気の頂点だったので、日本の不動産バブルが崩壊すると世界不況を誘発するのではないか、という論点だ。けっきょく、日本のバブル崩壊は世界へ波及せず、国内にとどまることになる。