──高級な枯れ節のほうがおいしいと思っていましたが、そういうわけでもないんですね。

同社を象徴する製品である削り節『駿河ふぶき』。昔の家庭で削っていた本枯節の風味、そのものだ。農林水産大臣賞も受賞している

「はい。お味噌汁なんかには荒れ節のほうがおいしくできますし、お澄ましなんかは枯れ節が向いています。用途に応じて、だと思います。焼津産は薫臭が強く、旨味がダイレクトです。そのあたりは我々の業界が伝える努力を怠ってきた部分です」

 かつお節は一般消費者にとってわかりにくい商品だ。例えばパックの裏の原材料表示には「かつおのふし」と「かつおのかれぶし」の2種類があり、それぞれ荒節と本枯節を指すこともあまり知られてはいない。

 他にも「花かつお」というのは通称で、かつおの荒節を削ったものだ。ややこしいのは削り節の呼び方で「かつおぶし削りぶし」というのが本枯節を削ったもの、「かつお削りぶし」というのが荒節を削ったものだ。高価な本枯節は関東で好まれ、荒節の出汁は大阪など西日本を中心に人気がある。荒節はカビによる脂肪やアミノ酸の分解が進んでいないため枯節よりも旨味は少ないが、昆布出汁とあわせて使う大阪では香りのある荒節が向いていたのかもしれない。

「若い方は荒節のほうがパンチのある香りでおいしいって言いますけれど、私くらいの年齢になると枯節の旨味がわかる、というか、もちろん好みもあります。とにかく一般の消費者の方にもっとかつお節と親しんでほしいというのが我々が考えていることで、このかつお節のポテトチップスなどはそうした気持ちで開発しました。色々と試したんですが、かつお節も最初から入れておくと味が落ちてしまうんですよ。それで後から加える形にしたんです」

 テレビ番組で紹介されたことで「新丸正 焼津発 かつお節ポテトチップス」はよく売れたそうだ。他にも新丸正の商品点数は全部で500品目ほどと非常に多い。

──それだけかつお節が可能性のある食べ物ということですね。

「そうです。かつお節を多くの方に知っていただきたいということです。とういうのも昭和30年代までは家でかつお節を削っていて、削り節屋さんも各町に1軒はありました。ところが昭和30年代の終わりに「だしの素」のような商品が生まれ、今では削り節から出汁をとっている家庭は……どうでしょう、10%もないんじゃないでしょうか。1300年あるかつお節の伝統が途切れてしまうことは避けたい。ですから毎日は無理だとしても、1週間に1度、1ヵ月に1度でいいので、削り節から出汁をとっていただけるようご提案させていただいています」