当連載は主に「職場」での育成をテーマにしていますが、社会に出る=会社に入る前段階での意識付けと動機付けも重要である、と私は考えています。そこで、2回続けて採用=就職について述べました。今回も、その続きで、就職に際しての親の役割について考えてみます。
子どもの就職に親が口出しするのは
いかがなものか、とは思うけど
東京近郊の、ある中堅私大の保護者会で講演をしました。テーマは就職・採用の現状についてです。大学の保護者会とは、いささか面妖な感じもしますが、少子化時代で経営力が問われている現在、多くの大学では顧客サービスの一環というべきでしょうか、保護者会が活発に活動しています。
「わが子の就職」は、今も昔も親にとっては重要な関心事ですが、とりわけ雇用環境が悪化している昨今は実に悩ましい問題です。
講演に集まった保護者たちは、私と同年代。私にも大学2年生の息子がいますので、本当に他人事ではありません。
講演の冒頭で、「皆さんは、自分の就職の時に、親に相談しましたか?」と問いかけてみました。手を挙げてもらったわけではありませんが、その表情からすると、多くが「親に相談などしなかった」という反応でした。出席する保護者の数はおよそ100名。ざっと見た感じ、父親、母親、ほぼ半数という感じです。
私自身、就職先を決めるときに両親には相談した、という記憶はありません。父親に、「まあ、大学を出たら就職はしておけ」ぐらいのことを言われたような気もしますが、それは相談して返ってきたコメントではなかったはずです。
大卒の就職ですから、それは大人の選択。親が口出しすべきではないだろう、というのが健全な態度であり、意見であるかもしれません。私自身、子どもに対しては、自分で考えて決めてほしい、と思います。
ただ、一方では、社会で20年以上も経験を積んできた身として、巷にあふれる「就職本」には書かれていないようなリアルで有益な助言ができるはずだ、とも思います。いつの時代にも変わらない親心、というだけではなく、今だからこそ、リーマンショック後の惨憺たる採用状況だからこその思いかもしれません。