Draper Nexusマネージング・ディレクターの北村充崇氏(提供:Draper Nexus)

 北村氏は他にも、投資家を説得するストーリーや、Grow Fastといった要素の重要性を指摘する。これらについては、同社が注目する4つの事業領域や、シリコンバレー村のおきて、といった内容も含めて同社のブログで公開されている。また、スタートアップと関わりの深いベンチャーキャピタルの仕事内容や、同氏がDraper Nexusを設立した経緯についても同じくブログに公開されているので、興味のある方は一読してほしい。

 ところで、こうした話はスタートアップだけでなく、イノベーションに取り組む企業にも当てはまるのだろうか。Draper Nexusではファンドへ出資する日本企業向けに、独自のアクセラレータプログラムを提供している。冒頭のワシーク・ボカリ氏も、同社のベンチャー・アドバイザーの一人である連続起業家だ。

 企業の人材を対象としたアクセラレータプログラムでDraper Nexusが重視していること、それは自分の価値を知ることだと北村氏は言う。「企業が市場に提供するべき価値というのは、近年大きく変化しています。イノベーションに取り組む時、従来認識してこなかった自らの価値に気づくことは非常に重要です。例えば金融業でも、今ではお金以外の何を提供できるか、が求められる時代になっています。自分の価値を知り、相手に何ができるかを考え、相手の目線で自分の価値を捉え直し、新たな価値を探し続けること。シリコンバレーのコミュニティーにプレーヤーとして参加していくうえで、大切なことだと考えています」。

明日の成功を決めるのは
日々のProof Of Concept(概念検証)

 自分の価値を探求し続けること。その旅は、それによってどのような課題を解決したいのか、というビジョンと密接に関わる。Appleのスティーブ・ジョブズ、Googleのラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、Facebookのマーク・ザッカーバーグ。シリコンバレーのイノベーションには常に、価値や課題を探求し続けてきた人々がその中心にいる。

 著名人でなくても、新しく生まれるプロダクトやサービスには、ある社会の課題を解決したいという、強い想いがある。先日Uber Poolで乗り合わせた韓国人の青年は、自らを自閉症だと語り、自閉症の人々がもっと受け入れられる世の中を創るためのスタートアップを立ち上げていた。スタンフォードの教授とアイデアを相談するために、シリコンバレーを訪れたのだと言う。

 こうした課題に対する個人の情熱は、スタートアップのエネルギーの源泉だ。しかし、「人が大切です」、という言葉は誰しも納得するものの、では自分の会社はどうすればよいのか、という答えを示してはくれない。だがもう一歩踏み込めば、情熱を持った人が日々実践していることから学ぶことはできる。それを実践することで、逆に社内に情熱をもたらすことができるかもしれない。