Photo by Hiroyuki Oya

サイモン・シガース ARM CEOインタビュー
「成功を共有する」考えが
エコシステムを育てIoTでも強みになる

 
──半導体産業にいまやARMは欠かせない存在になっています。
 
  ARMはCPU(中央演算処理装置)を簡単に使えるエコシステムを構築し、顧客を拡大していくビジネスモデルです。
 
  半導体メーカーはCPUの開発に投資しなくても、ARMと契約を結べば、半導体にCPUを搭載できるようになりました。すると、開発リソースを得意分野につぎ込むことができる。ユーザー同士でコストを共有し、半導体のコストを削減できたことが成功の要因だと考えています。
 
──強みの背景にあるエコシステムは、どう育てたのでしょうか。
 
  ARMは小さい会社で、設立当初はエコシステムを作るほかありませんでした。当社のIP(知的財産)である設計図を使ってもらうためには基本ソフトなどさまざまな要素が必要で、全て手掛けることは不可能でした。
 
  エコシステムをうまく回すためには、参加する全ての企業がもうかるようにする必要があり、情報提供などサポート体制を整えました。いまとなってみれば、ARM社内でできる部分もありますが、やりません。エコシステム維持のためです。「成功を共有し合う」という考え方は、設立当初からのARMのDNAとしてわれわれに刻み込まれています。
 
──ロイヤルティが半導体1個当たり約5円と非常に安く感じます。
 
  ロイヤルティに対する考え方は、常にフェアな価格を維持することです。「価格を上げればもっともうかる」とよく言われますが、あくまで成功を共有し合うという原点に立ち返っています。

  一部の市場では価格を上げることは可能でしょうが、絶対にしません。どの市場でも、ARMのIPを採用すると付加価値が上がり、より大きなリターンが得られる仕組みを作ることが狙いです。
 
──ARMのIPで新規参入が容易になり、脅威に感じている既存の半導体メーカーもあります。
 
  半導体市場は常に進化を遂げており、だからこそ面白い。新しいビジネスモデルの台頭で開発コストが下がり、多くの人が参入できるようになりました。私はとても良いことだと考えています。
 
  消費者の選択肢が増え、値段も安くなります。半導体業界は継続的にイノベーションを起こしていかないといけません。イノベーションができるところは成功し、できないところはそれまでです。
 
──IoT(モノのインターネット)の領域は米インテルも注力しています。ARMの戦略は?
 
  IoTは巨大市場で、競争が激しくなるでしょう。そこでは、ARMのビジネスモデルやパートナーは大きな強みになります。イノベーションを起こしたARM対応のソフトウエアは、同じCPUを使う他のデバイスでも再利用できます。エコシステムが拡大していけば、ARMを利用したソリューションの価格は安くなっていくでしょう。