「今、辛いよ……」気持ちを言葉にできると変わる
けれども私は、人生の「流れ」を変えることができた。
一体何が起こって変われたのかといえば、じつは何も起こっていない。
私自身は何も変わらなかったのだ。
ただ、「ありのままの自分の気持ちを認めることができた」というだけである。
それはこういうことだ。
どん底の状態になって、初めて私は、次のような言葉を口に出すことができたのである。
「今、辛いよ……」
最初にそれを言ったのは、妻に対してだった。しかも「辛いよ」どころではない。
「悔しいよ」「しんどいよ」「悲しいよ」「不安だよ」「残念だよ」
そして、「今の自分を変えたいよ」……。
言葉は止めどなく溢れ、いつのまにか涙と一緒になる。妻はただ、黙って聞いてくれていた。
実家に戻ったとき、母親にも同じことを告げた。
「今、辛いよ……」
母は私に怒ることもなく、こんな言葉をかけてくれた。
「明けない夜はない。夜明け前がいちばん暗いもの。天はその人間に越えられない課題は決して与えないんだよ」
この言葉は、私にとって現在も大切な言葉になっているが、こうして私は「いま、辛い状態にある」ということを本心から認めることができたのだ。しかも認めるだけでなく、誰かに話して、自己開示することまでできた。
「流れ」を変えるためには、これがいちばん重要なことだったのである。
現状を認め、自己開示するだけで、果たして流れは変わっていくのだろうか?
変わっていく。
むろんそれは「変わる発端になる」ということだ。
すべてはここから始まるのである。
これが、流れを変える第一のステップ、「今、ありのままを受けとめる」である。
次回は第二のステップ、「自分自身を守る」ことについてお伝えしよう。