山田は学歴には「一家言」を持つ。最終学歴は埼玉県の県立高校。卒業した1980年代半ば、世の中の大学進学率は30%前後だった。大学には進学をしなかった。上京し専門学校に進むが、半年ほどで辞める。知名度の高いテレビ番組制作会社に入った。アルバイトの身である。すでに当時、正社員の採用試験は大卒に限られていた。

 会社の番組制作の実績は、都内でも数百はあると言われるこの業界で、上位10番に入る。二十数年前、制作部の社員50人ほどの学歴はおおむね大卒だった。その中に高卒の山田がいた。仕事は映像の編集の補助だった。制作会社にはディレクターやアシスタントディレクターらがいる。そこに編集補助の山田が入った。しかも未経験である。

 山田は、一貫して周囲の社員をねたんだ。30歳前後でフリーになった。二十数年前から唯一敬意を払うのが、東大卒の局員だった。実際は、キー局(この場合は民放)では東大出身の社員は毎年多くとも同期生の中で2割ほどである。同期生(2006年入社)36人の中で2人しかいない局もある。

 山田は一緒に仕事をしたことがないにもかかわらず、知り尽くしているかのように局員のことを語る。

「あの局員のP(プロデューサーを意味する)は、東大出のDだからPになるのが速い。頭がいいんだよね」

東大卒以外を否定し
自分を守ろうとする心理

 周囲の人によると、山田は東大以外の大学を卒業した社員を否定することで、極度な学歴コンプレックスを拭い去ろうとしているかのようだという。筆者はこう思う。この男は、東大卒の社員を称えているのではなく、「自分を軽く見るな」と言っているのではないだろうか、と。

 事実、これに意味合いが近いことを何度も口にするという。「あのディレクターは○○大卒だけど、仕事のレベルは大したことがない。自分のほうがマトモ」。

 山田のような男性をどう捉えるべきだろうか。筆者はこの二十数年間で、似たような人を少なくとも150~200人は見てきた。あるときは取材で、あるときは何かの会合などの場でだ。