【第四条】 お金の在処が分かるようにしておけ。

 判断力が十分ある高齢者は、前記の第一条から第三条を守ってお金を運用してくれたらいいのだが、高齢者の場合、「自分が不意に判断力を失う可能性」があることを頭に入れておきたい。

 いわゆる認知症が進むケースもあるし、単純に記憶を失うこともあるだろう。また、急病や事故などで意識のレベルが急激に下がることがあり得る。

 例えば、ヘソクリのつもりで家族に告げずに持っている銀行預金がある場合に、預金者本人が記憶を失ったり、亡くなったりした場合に、さらに家族が預金通帳を見つけられない場合には、預金が見つけられなくなる可能性がある。

 現在の銀行預金は、動きがなくなってから10年以上経つと後から記録を遡ることができない仕組みになっている。

 筆者の家族は、高齢の父の過去の預金の動きを知ろうとして(退職金の一部の行き先が不明だった)、あるメガバンクに口座の記録を見せてほしいと頼んだのだが、本人を店頭に連れて来るように要求され(考えてみると当然ではあるのだが、高齢だと非常に大変だ)、その通りにしたが、10年以前の記録はないことになっており(文書の保管年限が10年なので、それ以上は対応しない)、また10年以内の記録の調査にもそれなりの費用が掛かった。

 動きが止まって10年を超えた預金は、現状では、いったん銀行の本店に移換されて銀行の利益となる。今のところ、将来、預金通帳と印鑑などが出てきて預金の存在が確認された場合、本人の遺族に対して預金が払い戻されるケースがあるようだが、これは銀行の自主的な判断に過ぎないという。

 例えば、夫婦の一方ないしは両方が、相手に知られたくない口座で金融資産を保有していることは珍しくないが、そうした場合には、例えば、子どもに資産の在処を教えておくべきだろう。とはいえ、子どもも複数いると、特定の子どもに財産の在処を教えると、相続でもめる原因になる場合があろう。真に「信用できる人」を持っているかどうかは、その人の人生全体に起因する大問題だ。

 何はともあれ、高齢者は、「自分が不意に判断力を失った場合」について想定しておくべきだ。

 もっとも、これは、本質的に高齢者に限った問題ではないかもしれない。運用にあって、「高齢」が特別な要素ではないように、全ての年代にあってお金の在処を情報として適切に管理する必要性があるのだ、という理解を持っておくことが正しいということだろう。

 なお、政策の問題として、筆者は、全ての金融口座とマイナンバーを結びつける金融取引実名制を早急に導入することがいいと考えているが、その際に、本人ないし遺族が、休眠預金などを後から遡って見つけることができるようなデータ利用ができると望ましいと思っている。こうした使い方が、本人の側でもできるならマイナンバーもありがたい。