尖閣諸島海域で、中国漁船が日本の巡視船に衝突する事件が発生してから1ヵ月ほどが過ぎた。この事件との関係性はともかく、中国河北省の軍事管理区域に侵入し、ビデオ撮影をしたとして、日本の中堅ゼネコン・フジタの社員4人が当局に拘束された事件も、記憶に新しい。

 先日、拘束されていたフジタ社員の最後の1人も解放され、ようやくこの問題が鎮静化の方向に向かっていると思ったら、この週末に四川省で反日暴動が起こっているようだ。「中国は危ない国だ」と再認識している日本人も多いだろう。

 今回の事件で改めて認識させられたのは、日中間に緊張が走る不測の出来事は、いつでも起こり得るということだ。

 振り返れば、今回のような出来事は過去に何度も起きている。南京大虐殺や従軍慰安婦の認識を巡る日本の歴史教科書問題、小泉元首相の靖国神社参拝問題などの際も、日中間に深刻な緊張が走った。そしてこのような出来事は、今後も度々起こるであろう。

日中間の軋轢が日本企業にもたらす悪影響
「中国依存度」だけでは語り尽くせない不安

 日中間に緊張が走り、国同士の関係が悪化した場合、その犠牲になるのがビジネスだ。領土問題のように、(両方の国から見て)客観的に唯一正しい答えが存在せず、双方が言い分を譲らない(譲れない)問題の場合には、「どちらが正しい」「どちらが正しくない」という議論をしても、ビジネス上はあまり意味がない。

 結果がどうであれ、解決に時間がかかればかかるほど、ビジネスはネガティブな影響を受ける。そして、より不利な状況に立たされてしまうのは、中国企業ではなく日本企業だ。

 それは、世間でよく言われるように、日系企業が生産拠点、原材料調達先、および市場として中国に対する依存度が高いという理由だけではない。フェアプレーで外交を続ける日本と違い、望む結果を導き出すためであれば、中国はありとあらゆる手段を使うからだ。

 今回、まだ中国漁船の船長が釈放されていない段階で、ある日本びいきの中国人は、「今回は中国政府は本気なので、戦争以外のどんなことでもするだろう。早く日本が折れた方が日本のためになる」と言っていた。