日本GE役員などを歴任して新刊『ストーリーでわかるファシリテーター入門』を上梓した森時彦氏と、日本で初めてファシリテーションを学べる実践的な企業研修プログラムを開発し展開したピープルフォーカス・コンサルティング創業者の黒田由貴子氏。ファシリテーションの普及に長年努めてきたお二人に、個人や組織がファシリテーター型リーダーシップを備えるための要点を3回にわたって語り合っていただいた。(構成:谷山宏典)

ファシリテーションの導入を阻む「組織の壁」とは?

ファシリテーター型リーダーが備えるべき
「スキル」と「マインド」とは?

森時彦さん(以下、森) ファシリテーター型リーダーになるためにはどんなスキルが必要だと、黒田さんはお考えですか?

黒田由貴子さん(以下、黒田) 当社のファシリテーション研修では、スキルに関しては3つのフレームワークを設けています。「IQ」「EQ」「進行管理」です。

 IQとはロジカル思考やクリティカル思考のことで、話し合いが論理的に展開されているかを判断したり、メンバーからさまざまな意見が出されたときに論点整理をするためのスキルです。EQでは、行動心理学や認知科学をベースにして、メンバーの気持ちや考えを読み取ったり、発言や行動を促すための方法を学びます。進行管理は、話し合いの進め方や時間を管理して、適切に議論を進行させるためのスキルになります。

 進行管理はファシリテーションのもっともベーシックなスキルであり、ある程度時間をかけて学べば誰でも身につけることができます。ただ、IQとEQは「これだけ学べば十分」というものではなく、一生をかけて磨いていくスキルだと思います。実際、私も何十年とファシリテーションをやっていますが、「まだまだだなぁ」と感じるときが多々ありますから(笑)。

 メンバーの意見を引き出し、整理していくためには、リーダーの考え方や物事の見方が偏っていてはダメで、常に「オープンマインド」でいることもファシリテーター型リーダーの重要な条件ですよね。

 オープンマインドでいることは、簡単なようでいて、実はとても難しい。人間には知らず知らずのうちに一定のものの見方に偏ってしまう傾向がありますからね。物事を多角的に見たり理解するには、意識的な努力が必要です。

 オープンマインドをどう訳すとうまく日本語として響くのか難しいところですが、もしかしたら松下幸之助さんが言うところの「素直な心」がぴったりかもしれません。