海外において機関投資家や富裕層向けの資産運用は「長期・積立・分散」が超王道です。日本では、個人投資家は多くが短期かつ集中型の投資に偏っていて「長期・積立・分散」の資産運用は定着しないままですが、この「長期・積立・分散」の資産運用は、プロの投資家よりも一般の個人投資家にこそ有利といえるポイントがあるのです。新刊『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』(発売後、たちまち重版!)より、その理由をご紹介します。

「長期・積立・分散」の資産運用は、「長期」という言葉の通り、数ヵ月や1年といった短期間で成果を出そうとするのではなく、10年、20年かけて資産を育てます。時間を味方につける資産運用、ともいえるでしょう。しかも、世界の金融商品に「分散」することで、世界の成長を取り込むこともできます。

時間と世界が味方!「長期・積立・分散」の資産運用時間と世界を味方につける「長期・積立・分散」の資産運用

「長期・積立・分散」の資産運用は、投資のプロでなくても実践できます。それどころか、「短期的なリターン」を求められてしまうプロと比べ、一般の個人投資家のほうが有利なこともあります。

 時間を味方につけるには、資産運用をなるべく早く始め、長く続けることが大切です。若くから始めていれば、より長い時間を味方にできるので資産運用に成功しやすくなります。私の妻の両親が、学歴・職歴が同じような私の両親と比べて10倍の資産を築けた最大の理由も、まだ貧しかった若い頃に資産運用を始めたからです。

 長く続けて時間を味方につける--簡単に聞こえますが、プロの投資家にとってはハードルが高いことです。

 というのも、プロの投資家は、定期的に運用状況を評価されます。多くの場合、短期的なリターンをチェックされます。「10年、20年続けていれば効果が出る」とわかっていても、短期的に資産価値が下がり続けていると、長期的なリターンを犠牲にして、短期的なリターンを“改善”する必要に迫られることがあります。

 たとえばプロの投資家は、為替による一時的な損失を抑えるために、為替ヘッジ(為替のリスクを減らす取引)をかけることがあります。為替ヘッジをかけると確かにリターンは短期的に安定しますが、コスト(一種の保険料)もかかるため、長い目で見るとリターンは悪化します。

 また、金融危機が起きると、プロの投資家は資産の売却を強制されます。大きくマーケットが下がると、あらかじめ決められたリスクを超過してしまうため、「放っておけば上がる」とわかっていても、内部ルール上、売却するしかありません。何もしなかった場合と比べて、リターンは悪化します。こうしたプロの投資家の行動が資産の価格をさらに引き下げ、金融危機のショックを増幅させます。

 プロの投資家とは異なり、個人投資家は誰からも運用報告を求められず、長期投資に徹することができます。短期的なリターンに一喜一憂しないと心に決めれば、時間を味方につけ、長い目で資産運用を続けられます。「長期・積立・分散」の資産運用をするなら、個人投資家のほうがプロの投資家よりも有利なのです。