本来食べられるにもかかわらず、食品が捨てられてしまう「食品ロス」。日本では年間1人あたり51kgも食べ物を祖末にしている計算になるという。著書『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書)があり、食品ロス問題の専門家でジャーナリストの井出留美氏に話を聞いた。(清談社 福田晃広)

震災や事件によって
浮かび上がった“食品ロス”

賞味期限設定のあり方が、食品ロスの大きな問題の1つになっています。スーパーやコンビニなどでは、あくまでも目安にすぎない賞味期限よりも、さらに手前で商品を返品したり、廃棄している Photo:PIXTA

 農林水産省は、2003(平成15)年から2015(平成27)年まで、食品ロスの統計調査を行なった。2018年4月、農林水産省と環境省が公表した推計によると、2015(平成27)年度の食品廃棄物は2842万トン、そのうち食品ロスが646万トンにものぼる。東京都民が1年間で食べる量を廃棄している計算だ。

 昨年、日本経済新聞が2018年を「食品ロス元年」と書いたように、多くのメディアで“食品ロス”という言葉が出るようになってきたが、日本で注目され始めたのは、2011年の東日本大震災が大きかったと、井出氏は語る。

「東日本大震災が発生し、避難所では食べるものがない。首都圏のスーパーやコンビニでさえ、いつもパンパンに詰まっている商品棚がガラガラになりました。いかに、いつも食べ物があるのが当たり前と思っていたかを多くの国民が痛感し、食品ロス問題にも関心が高まったといえます」(井出氏、以下同)

 ほかにも、2016年のカレーチェーン店「CoCo壱番屋」を展開する壱番屋の廃棄カツ横流し事件がメディアで大きく取り上げられたことも、食品ロスという言葉が注目される要因となった。