世界中で大ブームとなっている、新しい手帳・ノート術「バレットジャーナル」。日本でも、発案者のライダー・キャロル氏が作った公式サイトを見ながら、見よう見まねで実践する人が続出している。しかし、その使い方は多種多様。ライダー氏が本来意図したものとは違うものも少なくない。そんななか、ライダー氏自らが書き下ろした初の公式ガイド本がついに登場。本連載では、ライダー氏の書籍『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』の刊行を記念して、著名なバレットジャーナル・ユーザーや専門家たちに寄稿してもらう。今回は、「手帳総選挙」などを主催する日本手帖の会の代表で、手帳を知り尽くす折比嘉育郎氏が、バレットジャーナルの特徴と魅力について語る。

手帳のプロが教える<br />世界最強手帳「バレットジャーナル」の使い方

世界中で大ブーム!
「バレットジャーナル」とは?

手帳のプロが教える<br />世界最強手帳「バレットジャーナル」の使い方折比嘉 育郎(おりひか・いくお)
日本手帖の会代表
本職はITエンジニアで知的生産システムの開発・運用に従事。日本手帖の会では、交流の場「手帳サロン」、書き比べ「手帳総選挙」等のイベント開催や、書籍監修、企業・学校向け講座、海外交流等の活動を行っている。日本は、世界にも稀な手帳文化の国と考え、多くのユーザーやメーカー等関係者をつなぐ活動を進めている。『ロイヒトトゥルム1917ではじめる箇条書き手帳術』(実務教育出版)、『究極の手帳 選び方と使い方』(玄光社)等に監修協力。
・日本手帖の会・公式サイト
 http://nippon-techo.jp/
・日本手帖の会・イベントサイト
 http://tsj.connpass.com/

 バレットジャーナルは、デジタルプロダクト・デザイナーのライダー・キャロルさんが2013年に発表したノート術です。発表以来世界的に注目を集め、利用者が増えています。

 バレットジャーナルの公式な説明は従来ウェブサイトを中心に公開されていましたが、2018年10月に初の公式解説書『The Bullet Journal Method』が刊行され、2019年4月にその日本語版『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』が刊行される運びとなりました。

 本稿では、同書を補足する意味で、バレットジャーナルの周辺事情について記してみたいと思います。

世界中に広がる3パターンの使い方

 バレットジャーナルの基本的な考え方は非常に単純で、細部をカスタマイズしたりモジュールを拡張したりすることも自由です。ライダー・キャロルさん自身、それらについて大変寛容な立場(*1)をとっています。現在のバレットジャーナルの発展は、この単純性・拡張性・寛容性によってもたらされたと言えます。

 解説書籍が複数刊行され(*2)、バレットジャーナルに便利な機能を持つノートや文具(*3)も充実しつつあることで、バレットジャーナル利用者は増加の一途を辿っています。

 現在、ブログ・SNS・動画サイト等で多くの事例を参照することができますが、一口にバレットジャーナルと言っても非常に幅広い運用例が存在します。

 それらの事例を観察すると、およそ以下の3つの型に分類することができます。

(1)「原型的バレットジャーナル」

 ライダー・キャロルさんが説明するオリジナルのルールやフォーマットを忠実に守り、なにも足さない・なにも引かない使用方法です。

(2)「単純化バレットジャーナル」

 バレットジャーナル=タスク管理術と捉え、機能をさらに単純化して運用する使用方法です。タスクバレットとデイリーログを中心に運用し、他のバレットマークやフューチャーログ、マンスリーログ、インデックスなどは、一部または全部の使用を省略します。マイグレーション(移動)も日次ではなく、週次のように間欠的に行います。

(3)「装飾化バレットジャーナル」

 モジュールのフォーマットを手描きするという特長を推し進め、モジュールの種類やフォーマットの装飾要素を増やし、見た目の楽しさを重視する使用方法です。

 生活習慣を可視化する「ハビットトラッカー」、日々の気分を記録する「ムードマンダラ」、読んだ本を本棚のような図像で表現する「ブックシェルフ」等は人気のあるモジュールですし、他のフォーマット例も豊富に見つけることができます。

 モジュールのトピックを書く場合にも、ブラシレタリングやカリグラフィーの技術を応用したり、カラーマーカーを使用したりします。

 ここでは便宜上3つに分類してみましたが、実際には誰のバレットジャーナルを見ても一つとして同じものはありません。たとえ「原型的バレットジャーナル」であっても個性がにじみでてきます。これもまたバレットジャーナルの魅力であると考えています。

(注)
*1 例えば、同じビジュアルなノート術として紹介されることもある「マインドマップ」の提唱者、著述家のトニー・ブザンさんは、その手法を厳格に行うことを示唆しています。線の色・太さ・図の広げ方等、どうすべきか・どうすべきでないかを、詳細に説明しています。
*2 海外では遅くとも2016年以降、国内では2017年以降に、各種解説書籍が刊行されています。
*3 ライダー・キャロルさんはドイツのロイヒトトゥルムのハードカバーノート「LEUCHTTURM1917」を愛用しており、2014年にクラウドファンディングでLEUCHTTURM1917にバレットジャーナルの運用ルール、バレットマークの説明と、基本モジュールのトピック名をあらかじめ印刷した公式版ノートを製作しており、現在はロイヒトトゥルムの定番品になっています。また、バレットジャーナルの誌面を作成するのに便利なテンプレート、シール、マステ、ペン等の情報が利用者コミュニティや手帳オフ会等で共有されており、バレットジャーナルを対象にしたと思われる新製品も次々に発売されています。