「成績優秀な大学生が自宅やオフィスをお掃除します」。フロリダ大学の学生が創業した清掃サービス会社、スチューデント・メイド。創業から10年、“非常識なまでに徹底した、社員を大切にする経営”により、全米で大評判となった同社の採用面接には、ミレニアル世代の優秀な大学生が押し寄せるという――。この連載では、同社の創業者、クリステン・ハディードの著書『離職率75%、低賃金の仕事なのに才能ある若者が殺到する奇跡の会社』(クリステン・ハディード著/本荘修二監訳/矢羽野薫訳)の記事からその驚くべきストーリーやノウハウを紹介し、同書にインスパイアされた各回で活躍されている方のインタビューを掲載していきます。今回は、著者クリステン・ハディードの日本初の単独インタビューをお届けします。スチューデント・メイドとはどういう会社か? 特に何が違うのか? その背景にあるクリステンの信条とは? (聞き手/本荘修二)

なぜ奇跡の会社が生まれたのか? 新世代の世界トップ10CEO日本初単独インタビュー大学やさまざまな企業、組織で講演を行っている

清掃会社なのに将来のリーダー養成に注力する理由

なぜ奇跡の会社が生まれたのか? 新世代の世界トップ10CEO日本初単独インタビュークリステン・ハディード(Kristen Hadeed)
スチューデント・メイド創業者でCEO
2009年フロリダ大学在学中に、学生のみを雇用する清掃サービス会社「スチューデント・メイド」を起業。彼女が大学生として始めたビジネスである同社は、数百人の人材を雇用するまでに成長しており、業界をリードする離職率の低さ、信頼性、責任感、エンパワーメントの文化が全米で知られる。スチューデント・メイドで仕事をした学生の多くは、自分のビジネスを起業し、世界中の企業で非常に重要なポジションに就職している。スチューデント・メイドは主要メディアで次々と紹介され、著者には同社の成功から学びたいと講演依頼が全米の組織から殺到。現在は、スチューデント・メイドの経営のかたわら、人々に永続的かつ意味のあるインパクトを与える支援をする目的で多くの講演や研修などを行う。

本荘(以下太字):クリステンさん、忙しい中時間を割いてくれてありがとうございます。あなたが10年前に起業したスチューデント・メイドは、成績優秀な大学生だけを採用する清掃サービスの会社なんですよね。現在でもスチューデント・メイドのやり方は話題になったあなたの著書の通りなんでしょうか?

クリステン(以下並み字):そうです。いまでもスチューデント・メイドはフロリダ州ゲインズビルで主にフロリダ大学の学生を雇ってお掃除のサービスを提供しています。仕事は清掃ではありますが、最も力を入れているのは実は未来のリーダーたちのための教育プログラムです。

スチューデント・メイドに参加した学生たちには、将来彼らが成功するためのスキルを教えています。掃除には直接は関係ないでしょうが、問題解決、リレーションシップづくり、共感力、マーケティング、フィードバックなどの教育プログラムを実施しています。

日本でも読者の間で話題になったのは、リーダー教育に注力するようになった理由なんですが、なぜなんでしょう?

これらのプログラムを受けた学生たちは、この体験を友人に伝え、口コミで優秀な学生が集まって来ます。また、スチューデント・メイドでは、こうしたスキルを学生が学生に教えられるようにトレーニングしています。その良い影響が、学生が顧客に提供する清掃サービスのクオリティにつながっています。

スチューデント・メイドの卒業生は、教師、医師、エンジニアなど様々な職業に就いていますが、多くはいち早くリーダーシップを発揮しています。25歳で120人のボスになっっていたり、起業した卒業生もいます。

企業が将来も成功したいなら、若い人にすすんで投資すべきです。学校では学べないことを教えることです。それが私がスチューデント・メイドでリーダー教育プログラムに注力する理由です。

アイデンティティの危機から私たちを救ったのは、2人のインターンだ。それはまったくの偶然だった。彼らはフロリダ大学の学生で、授業の課題として月1回の「リーダーのランチ講義」を提案した。リーダーシップ・チームのメンバーがランチを手に集まり、インターンが選んだスピーカーが、資金管理や効率的な働き方、目標設定などさまざまなテーマで話をする。目的は、自分たちがプロフェッショナルとして成長する過程を実感することだ。

 

学生が選んだ最初のスピーカーは ― 。
私だ。自分の会社で講演するのだから、移動の手間もなく好都合ではある。やらなければならないことは山ほどあったが、私は引き受けた。あとは聴衆を2時間飽きさせない工夫が必要だった。

 

ランチ講義は手作りのランチから始まった。デスクを2時間留守にすると考えただけで動揺したが、終わるころには週末の合宿の後と同じくらい、力強いエネルギーが会議室に充満していた。
『離職率75%、低賃金の仕事なのに才能ある若者が殺到する 奇跡の会社』248ページ)