ピロリ除菌写真はイメージです Photo:PIXTA

 この数年、死亡者数が減少し続けている胃がん。

 ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌治療の保険適用で、事前に内視鏡検査を受ける人が増え、早期発見例が増えたためと推測される。ピロリ除菌療法自体の効果の検証はこれからだ。

 実際、除菌後に胃がんリスクがゼロになるわけではない。いわば感染後の後遺症で未感染例よりリスクは高く、注意が必要だ。

 先日、中国からピロリ除菌後の胃がん抑制効果を高める栄養療法についての報告があった。

 北京大学腫瘤病院研究所のグループは、中国山東省の住民3365人を対象にプラセボ対照無作為化比較試験(信頼度が高い試験方法)を実施。ピロリ陽性の2258人を(1)ピロリ除菌治療群、(2)ピロリ除菌+ビタミン(ビタミンC/E、セレニウム)群、(3)ピロリ除菌+ニンニクエキス/油群、(4)プラセボ群にランダムに割り付けた。残るピロリ陰性群もそれぞれビタミン群、ニンニク群、プラセボ群に振り分けた。

 栄養剤の投与期間は平均7.3年間で、追跡期間は平均22.3年間だった。定期的な内視鏡検査で診断が行われ、死亡時は証明書などで原因を特定している。

 追跡期間中、151人が胃がんを発症、94人が死亡した。このうち参加時にピロリ陽性だった人は、それぞれ119人(79%)、76人(81%)だった。

 解析の結果、ピロリ除菌による胃がん抑制効果は、追跡期間中ずっと持続することが示された。また、ビタミン補充群では、さらに有意に胃がん発症が減少した。一方、ニンニク補充群では有意な上乗せ効果は認められなかった。

 またピロリ除菌群、+ビタミン群、+ニンニク群ともに胃がん死を有意に抑制することが示された。

 検証のための追試は必要だが、食品や栄養剤で上乗せ効果が期待できるならうれしい話だ。

 ちなみに投与されたビタミン剤は、ビタミンC500mg、ビタミンE200IU、セレニウム75マイクログラム/分2・日で、日本の成人の1日摂取基準より多い。有害な量ではないが、試してみるなら管理栄養士に相談するといいだろう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)