日産離婚#1消えた統合計画Photo:Bloomberg/gettyimages

日産自動車とルノーがアライアンスを締結してから20年。両社は“家庭内離婚”の状況にある。特集「日産離婚」(全3回)の#1では、水面下で検討されていた2つの再編計画――日産がルノー対抗策として進める「超極秘計画」と、2012年頃にカルロス・ゴーン氏が描いた「経営統合計画」――の全貌を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子)

三菱商事、三菱自、日産
3社首脳が進めていた「仰天計画」

 昨年から、日産自動車と三菱商事、三菱自動車の上層部が水面下で進めていた「超極秘プロジェクト」がある。メンバーは、西川廣人・元日産社長(現・日産取締役)、垣内威彦・三菱商事社長、益子修・三菱自動車会長ら首脳と一握りの3社の幹部だけだ。

 メンバーが限定されたことからもわかるように、プロジェクトは厳戒態勢で進められた。このプロジェクトで検討されることが、日産にとって「仏ルノー対抗策」になり得るという戦略的な側面を持っていたからだ。

 日産は追い詰められていた。2018年11月に逮捕されたカルロス・ゴーン氏に代わりルノー会長に就任したジャンドミニク・スナール氏は、とんでもない策士だったのだ。

 昨年4月に日産取締役に就いたスナール氏は、満面の笑みを浮かべて「ルノーと日産とのアライアンスを強化する」と強調し、いったんは、ルノーと日産との経営統合に関する議論を棚上げする姿勢を見せた。

 だがその直後、ルノーと欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)との経営統合話が破談になると、フランス政府の意向を受けたスナール氏は日産を揺さぶりにかかる。昨年6月開催の日産の株主総会にかける定款変更(指名委員会等設置会社への移行)の議決を棄権するとの書簡を西川氏に送りつけてきたのだ。

 結果的に棄権は回避されたものの、その後も、スナール氏は日産の経営混乱に乗じて、あの手この手で日産の経営に介入してきている。その一例が日産の上層部人事への干渉だろう(詳細は特集『日産離婚』#2『日産、新体制発足から2カ月で始まった「内田社長降ろし」の内幕』)。

 1999年にルノーに救済された日産。その経緯から、ルノーが日産に43.4%を出資し(議決権あり)、日産がルノーへ15%出資するという複雑な出資関係が今も続いている。

 ルノーに「43%の筆頭株主」としての権利がある限り、日産はルノーの意向を無視して経営の重要事項を決められない。ある関係者は「日産、三菱商事、三菱自動車によるプロジェクトに関して、西川氏が一番前のめりになっていたようだ」と証言する。それぐらい西川氏は、ルノーに日産の経営の自由度を奪われることを恐れていたということだろう。

 では「超極秘プロジェクト」の中身はどんなものなのか。