習近平

【北京】新型コロナウイルスの大流行が中国経済に与える打撃が深刻化する中、同国の指導者たちは非常に困難な決断に直面している。それは隔離政策などの規制をいつ緩和するのかという決断だ。こうした規制はウイルス拡散の防止に寄与している一方で、経済成長を苦境に陥れている。

 経済活動が依然停止状態になっている多くの地域で工場を再開し、労働者と物資供給を再始動させるために、規則を減らす必要性があるとの声は、産業界幹部や一部の地方政府指導者の間で次第に大きくなってきている。

 しかし、多くの地方政府当局者らは、こうした動きが感染の再拡大や流行の長期化を招き、自らの立場を危うくする恐れがあることを懸念している。ウイルス拡散を確実に防止しながら成長軌道を維持せよという習近平国家主席の要求は、実行困難な任務を押し付けるものだとの不満を、非公式には口にする者も多い。

 ウイルス大流行の震源地である武漢市で感染がピークに近づきつつある兆候が出てきた中で、ここ数日はこうした緊張が高まっている。武漢で感染が確認された人数は4万7000人以上で、中国全土の感染者の約60%を占める。武漢の状況は、中国での流行が沈静化しつつあるのかもしれないとの期待を生んでいるが、その一方で当局者らに対しては、勝利を宣言し、経済的打撃が悪化する前に隔離政策を緩和するよう求める圧力が高まっている。

 武漢市当局は24日、隔離政策の緩和を同日から開始すると発表したが、そのわずか数時間後にこの発表を取り消した。武漢市政府は声明の中で、当初の発表は市の「主要な指導者ら」の承認を得ずに行われたと指摘した。

 北京などの他の都市でも、暫定的に規制を緩める措置が取られた後で新たな感染が報告されたため、ここ数週間は再び市民の移動制限が強化されている。

 習氏は幹部らに対し、手段を選ばずウイルスの封じ込めに全力を挙げるよう求める一方で、力強い経済成長の確保を要求するという、矛盾するメッセージを発している。習氏は、ウイルス流行を受けた政府の対応に市民が抱く不満を静めるとともに、国民の間での同氏の人気を高めるという成果を得るため、その両方の取り組みを必要としているのだ。