上海のアップルストア上海のアップルストアの前で。街は閑散としている Photo:Yifan Ding/gettyimages

感染広がる新型肺炎
中国経済に急ブレーキ

 中国で発生した新型肺炎は、日々感染の広がりを見せており、経済活動に急ブレーキがかかっている。中国交通運輸部によると、2月中旬の春節の移動者数は前年比-85%と大幅な落ち込み。中国汽車工業協会が発表した1月の新車販売は、前年比-18%と急減し、日本の大手メーカーが発表している建設機械の稼働指数も、1月に前年比-43%と大きく落ち込んだ。

 新型肺炎の感染が拡大する前、一部報道は中国政府が今年の実質GDP成長率目標を前年比+6%に設定すると報じた。しかし、金融機関やシンクタンクの多くは、1-3月期の中国の成長率予想を前年比+6%程度から前年比+4%程度に下方修正している。

 中国国家統計局によると、前期比で見た成長率は2019年4-6月期が+1.6%、7-9月期が+1.4%、10-12月期が+1.5%だった。これまで前年比で+6%、前期比で+1.5%程度で安定していた中国の成長率が、前年比で+4%近辺に落ち込むということは、1-3月期だけで見れば前期比で0.5%程度のマイナス成長に陥ることを意味する(+1.6+1.4+1.5-0.5=+4)。

 (統計の不備から厳密には計算できないものの)中国はリーマンショックが起こった2008年の金融危機の際も、前期比でのマイナス成長を回避したと思われる。筆者の試算によると、中国の前期比でのマイナス成長は2003年4-6月期が最後とみられるため、仮に今年1-3月期が前期比でのマイナス成長となると、実に十数年ぶりのこととなる。

 以上の試算は、中国の景気減速が2月上旬時点でのコンセンサス予想程度にとどまるという前提に基づいている。新型肺炎は、感染者数、死者数ともに重症急性呼吸器症候群(SARS)を大きく上回っており、中国では労働者が帰省先から復帰できず、工場の稼働不能、都市閉鎖による物流網の寸断、学校や公共施設の閉鎖などの報道も相次いでいる。2020年1-3月期の中国経済は、コンセンサス予想より大幅なマイナス成長に陥る可能性もある。