米国「善意の欠乏」あらわ、コロナと人種巡る危機Photo:The Washington Post/gettyimages

――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJのチーフコメンテーター

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 この春、米国を容赦なく襲った衝撃によって、さまざまな資金不足が引き起こされている。だがもっと重要なのは、より広くはびこる「善意の欠乏」という基礎疾患が浮き彫りになったことかもしれない。

 分かりやすく言えば、あまりに多くの米国人が、意見を異にする相手に対し「疑わしきは罰せず」の精神で善意を示すことを止めてしまった。

 ここ3カ月余りにわたって、米国は双子の衝撃に揺れている。まず新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)と、それに伴う経済停滞がやってきた。続いて、残酷にも警察が黒人男性を拘束する際に死なせたことを受け、抗議活動が広がった。理想的な世界であれば、こうした衝撃に対処する中で国がまとまる可能性もあっただろう。

 現実の米国では、経済活動の再開を巡って右派が怒りの抗議活動を行い、人種差別を巡って左派が怒りの抗議活動に立ち上がった。現状を象徴するかのように、ホワイトハウスの周囲は今や、何ブロックにもわたって鉄製の高いフェンスで囲われている。外国のテロリストを阻止するためではなく、米国市民を遠ざけるために――。

 何が起こったのか。