菅義偉官房長官と大日本猟友会の佐々木洋平会長ジビエのフレンチを試食する菅義偉官房長官(右)。左は大日本猟友会の佐々木洋平会長 Photo:JIJI,Joe Raedle/gettyimages

次期首相と目される菅義偉官房長官が推進してきたジビエ(野生鳥獣の食肉)の振興政策に暗雲が垂れ込めている。食肉を供給する鳥獣の捕獲の実績が、政府の目標に対して未達になりそうなのだ。てこ入れを図るには、狩猟を「趣味」から「ビジネス」に転換する必要がある。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

捕獲頭数の目標達成度20%も
環境省の捕獲事業の既得権益化

 シカやイノシシといった有害鳥獣が、農家が育てた農産物を食い荒らす被害が深刻だ。

 2018年度の有害鳥獣による農産物被害額は158億円に上る。実は近年、被害額は減少しているが、「農村への影響は統計上の被害額以上に甚大だ」(農林水産省鳥獣対策室)。国が把握できない被害(申告されないケースや、栽培をやめてしまったケースなど)が大きいためだ。

 有害鳥獣による被害は、高齢化している農村に深刻な影響を及ぼしており、このままでは全国で離農や廃村が相次ぐことになる。

 そこで、政府は意欲的な目標を打ち出し、有害鳥獣の削減に乗り出した。23年度までの10年間でシカとイノシシの生息数を半減する目標や、19年度までの3年間でジビエ利用量(食肉処理施設での処理量)を倍増する目標がそれだ。とりわけ後者は、菅義偉官房長官が主導して決めた経緯もあり「むげにできない目標だ」(政府関係者)。