「判断基準がお金」の顧客に、トップ営業マンが決して手を出さない理由写真はイメージです Photo:PIXTA

一流の営業マンが一流であるゆえんは、長期間安定してお客様の契約を取り成績を残すことができる、ということだ。しかし、どんな営業マンも陥るのが、競合との“値引き合戦”という泥仕合だ。なぜ泥仕合になってしまうのか、そして一流の営業マンはどのようにして対処しているのか。(営業サポート・コンサルティング代表取締役、営業コンサルタント 菊原智明)

泥にまみれる値引き合戦

 営業の世界では「泥仕合」という言葉ある。

「A社はアフターサービスが悪いです」
「B社は社員の態度が最低です」

 などと他社の欠点の指摘をし合う、見苦しい争いだ。商談を有利に進めようと他社を落とした言い方をするのは、ある程度は仕方がないことだ。

 泥仕合はいろいろな種類があるのだが、最も注意しなくてはならないのは“値引き合戦”である。結果が出ない営業スタッフがどうしてもハマってしまう。

 契約が欲しいあまり、クロージングの段階になって「頑張って他社より値引きしますから契約してください!」というやり方をしてしまうからだ。

 こちらが値引きをすれば他社もその条件を見て、それ以上値引いてくる。その金額を見てこちらはさらに値引きをする…。こうして泥にまみれていく。

ハウスメーカー時代のお客様

 ハウスメーカー時代の私はこんな泥仕合を散々やったものだ。あるお客様と商談したときのこと。お客様から「いい条件を出してもらえれば今月中に決める」と提案があった。話を聞いて「これはチャンスだ」と思い、一気に勝負に出た。

 競合があることだし、最初からかなりの金額を値引いて提出した。お客様はその値引き額を見て満足そうに「いい条件ありがとうございます。前向きに検討します」と言って帰っていった。

 そして数日後…。お客様はこう言ってきた。

お客様「A社からも見積書を出してもらったところ金額はだいたい同じなのですが、さらにサービスしてくれると言うんです。菊原さんのところは何かサービスしてくれますか?」