発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。

発達障害の僕が発見した「ブランドものを着ても残念な印象の人」に欠けているたった一つの要素

内面より、まずは外側が「ちゃんとして見える」が大事

 よく、マナーの先生が「品格が服装ににじみ出る」とか「人柄は細部に出る」とかいいますよね。僕はあれが、すごく嫌いです。僕みたいにいい加減な人間だって、服で武装したらいくらでも「ちゃんとした人」に見える。そう思えないと、この世界は辛くてやってられません。

 そういうわけで、服の管理というお話に連なって、この章で最も重要なお話を最後にさせていただきます。おしゃれとか、社会的コードが正しいとか、そういうことより何より重要な事項が間違いなく存在して、それは「きちんと手入れされた服を着ている」ことです。

 基本的に、一定以上の値段のする服や靴というのは、きちんと手入れをして長く使うというのが前提になっています。そして、それはすなわち「手入れを怠ると、本当にひどいことになってしまう」という残酷な事実を意味します。

 たとえば、100万円のジャケットが毛玉だらけだったらどうでしょう。長年何の手入れもされていない、変形して色あせた高級革靴を想像してみてください。これはもう、クリーニングしたばかりの安物ジャケット、1万円の新品の靴の方がよっぽどいいというお話になってしまいます。

 すごいブランドのとてもお高いスーツは、多くの人にとって「なんか高そうなスーツだな」くらいの印象しか与えません。しかし、型崩れした高級スーツを着ている人は、間違いなく悪い印象を持たれてしまいます。実のところをいえば、服のブランドなんかより、本当に大事なのはこういうところなのです。

 そういうわけで、細かいことはなしです。まずこれだけは最低限用意して、すぐに使えて、かつ視界に入る場所にセットしておきましょう。僕は玄関の近くにまとめて置いてあります。社会人としての身なりには、最低限必要な品ぞろえです。

・幅の広いスーツ専用ハンガー
・スラックスのシワを取るズボンプレッサー
・スーツやジャケットの毛玉やホコリを取るブラシ
・靴の形を保つシューキーパー
・靴磨き道具ワンセット

パリっとした安物を堂々と着る

 ただしこういった「手入れ」がどうしても苦手であるなら─というより苦手な人が多いと思いますので─この際アイテムはみな一定期間使ったら気兼ねなく処分できる安物で固めるというのももちろんアリです。手入れのされてない高級品より、新しい安物のほうが社会的フォーマットとしてはよっぽど適切です(もちろん、あなたが高級マンションを売る営業マンだったりする場合はちょっと話が別になるかもしれませんけれど)。

 ちなみに僕は、みなさんご存じの通り「手入れ」はあまり得意ではないので、常時手入れが必要な靴などはあまり持ちすぎないように心がけています。パリっとした安物を堂々と着る。これもまた、とてもいいやり方なのです。本当は僕も本革のブーツとか欲しいんですけどね……。