あなたの会社はDXで成功できる?「組織のプロダクトマネジメント度」チェックリストDXで成功するために、自社の「プロダクトマネジメント度」をどう確認すればよいのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

マイクロソフトやグーグルで、プロダクトマネジメントに携わってきた及川卓也氏は、「DXを進める企業にはプロダクトマネジメントが必要」と説く。プロダクトマネジメントを組織にスムーズに導入するには、どうすればよいのか。また自社の「プロダクトマネジメント度」はどう確認すればよいのか。及川氏が考え方と具体的なチェックリストを紹介する。

プロダクトマネジメント導入は
課題と向き合うことから始まる

 前回の記事『DXの成功には「プロダクトマネジメント」が欠かせない理由』では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める企業にはなぜ「プロダクトマネジメント」が必要なのかについて、解説しました。それでは、プロダクトマネジメントの考え方を企業に取り入れる際、どのようにすればスムーズに進められるでしょうか。

 プロダクトマネジメントという概念に限らず、組織に新しい概念を取り入れる際にはまず、なぜそれを入れるべきかを明確にしなければなりません。

 プロダクトマネジメントを知らない人とっては、プロダクトマネジメントも何らかの問題を解決するための手段となります。ですから、課題が何であるのかを組織で共有できていないのに手段だけを導入しようとしても、議論は噛み合わないはずです。どういう課題を解決し、どういう目的を果たしたいのか。まずは、何らかの課題で困っている当事者が、解決のためにプロダクトマネジメントを取り入れたい理由を、上司や経営者に共有するのがよいでしょう。

 プロダクトマネジメント導入のきっかけや理由は、取り組み始めた事業で困っていることやプロジェクトの失敗が続いていること、他社に比べて事業が伸び悩んでいることなど、何でも構いません。その上で「その問題がなぜ起こっているのか」を少し深掘りすると、より課題の輪郭がはっきりします。例えば「ユーザー理解ができていないから新規事業が拡大しない」、あるいは「初めは調子がよかったけれども、ユーザーの好みが変化してプロダクトから離れてしまった」といった分析ができるはずです。

 課題を深掘りすると、さまざまな原因と解決策が挙がってくると思います。トヨタ生産方式のフレームワークの1つとしてよく知られる「なぜなぜ分析」は、まさに課題の原因が何かについて、何度か繰り返して突き止めていくという手法です。課題の根本的な原因がどこにあるのかが明確になり、より適切な手段を取り入れることにつながります。

 こうした分析で浮かび上がる手段のひとつがプロダクトマネジメントです。ですから、もちろんプロダクトマネジメント以外の解決手段を複数、試してみてもいいわけです。ところが、プロダクトマネジメントに限ったことではありませんが、世の中では何らかの手法が話題になると、いきなり手段の話から始めて取り入れてしまう企業も多く、これは実にもったいないことだと感じます。課題の原因となっていることが何かを少し追求するだけで、得られる成果が変わるからです。

 こうした課題と向き合うやり方は、プロダクトマネジメントの手法をプロダクトマネジメントの導入自体にも応用したものと言えます。前回の記事でも取り上げたように、プロダクトマネジメントでは解決策だけを見るのではなく、解決策に至るまでの「誰の」「何の」課題を解こうとしているのか、それによって「どういう世界を実現」しようとしているのかが重要なのです。