接触確認アプリ
コロナ感染予防として、本当に使われるシステムはどう構築すべきでしょうか Photo:PIXTA

新型コロナウイルス接触確認アプリの普及率は約7%と、利用者が増えない状況が続いている。そうした中で、本当に使われるシステムを作るにはどうすればいいのか。この現状に対して「新型コロナウイルスにより生まれた“新しい日常”で、日本はどういう社会を目指すのか、ビジョンとロードマップを明確に持たなければならない」とプロダクトマネジメントの考え方を引用してこう語るのは、マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏だ。コロナとの共存が必要な時代においてITが果たすべき役割を、及川氏が解説する。

「個人情報が危ない」「6割普及が必須」
アプリにまつわる誤解

 前回の記事(「普及率3%の『コロナ接触確認アプリ』を浸透させる3つのカギ」)で紹介した「新型コロナウイルス接触確認アプリ」は公開から約1カ月後の現在、およそ870万ダウンロードされています(7月27日17時時点)。

 しかし前回述べたとおり、公開時にはアプリがどういう目的を持つのかは正しく周知されておらず、運用は誰がどう行うのかといった点でも不透明な部分が残っていました。公開後も、陽性者が処理番号を登録できない問題など不具合が見つかり続け、1カ月近くたってもうまく機能していなかったことは非常に残念です。

 必ずしも国民の信頼を得られないまま公開されたことで、アプリをネガティブに捉えていた人の印象は、これらの不具合でさらに悪くなってしまいました。それに「個人情報が取得される」「どこへ行って誰と会ったかが把握される」などといった誤解もまだまだあるようです。実際には位置情報などの個人情報は保存も取得もされず、政府や厚生労働省であっても誰が感染者として登録したか、登録者と濃厚接触した人は誰かといった情報を知ることはできないにもかかわらず、です。

 また英オックスフォード大学の研究グループによるシミュレーション結果をもとに「6割以上の国民がインストールしなければ効果が期待できない」との認識も広がりましたが、これは「LINE」並みの普及を目指さなければいけないということです。この数字が本当ならば、ほぼ強制的にインストールさせるか、よほど強力なインセンティブを用意しなければ、実現は不可能であり、現在のアプリ配信のアプローチは全く間違っているということになります。

 実は「6割必須」というのは「数字が独り歩きしたものだ」と当の研究グループメンバーが述べています。アプリの普及率がたとえ3割だったとしても、コロナウイルスの症例数と死亡数は減少するとシミュレーションでは推定されているのです。もちろん普及率が高いに越したことはないので、そのための努力は必要ですが、「LINE並みの普及なんて無理なんだから、自分もインストールしない」といったあらぬ誤解を生まないためにも、政府には正しい情報の周知に努めてもらいたいところです。