梅農家の有本陽平さん日本百貨店しょくひんかん(秋葉原)でリモートで“実演販売”を行う梅農家の有本陽平さん 写真提供:日本百貨店

コロナ下でのビジネスも2年目に突入した。小売店の店頭ではリモート販売も始まっているが、なかなか対面のときのように成果が上がらないケースが少なくない。しかし、日本各地の特産品を扱う日本百貨店では、実演販売をリモート化したにもかかわらず、和歌山の高級梅酒の売り上げが前年比2.5倍に増えたという。(ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)

1本4000円の高級梅酒が
リモート実演販売で売り上げ2.5倍に

 秋葉原にある日本百貨店しょくひんかんは、各地の特産品や名品を販売する日本全国のアンテナショップの集合体のような存在だ。年間400本以上の生産者などによる実演販売やワークショップのなどのイベントを開催することも魅力の一つだった。

売り場レジ前の飛沫防止フィルムには装飾をするなどして、楽しい雰囲気を演出している 写真提供:日本百貨店
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 しかし新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、昨年4月から6月上旬までは休業。再開後も、大きな魅力の一つだった「試食販売」ができない状況に追い込まれた。

「試食販売ができないため、生産者の方には店頭に立っていただきながら、推奨販売へと切り替えてもらった。この時代、マイナス面もポジティブにしていくことが大切だと考えて、生産者と協力して味覚以外の五感に訴えるような販促も行っていった」(日本百貨店しょくひんかん 蓑島学店長)

 販促としては、例えば、商品の完成イメージ写真や自宅で再現できるように手渡すレシピを作成。そのほか、ニンニク農家とはニンニクオイルを温めて香りを立て、嗅覚を刺激することで販促につなげたという。

 こうした取り組みと同時に開始したのが、リモートでの実演販売会だ。昨年7月から和歌山県の梅農家「有本農園」がつくる梅酒を、和歌山と中継をつないで販売したところ、なんとコロナ以前と比較して年間で2.5倍売り上げが増加したという。

 しかもこの梅酒、なかなかの高級品だ。地元の吟醸酒を使用した「Plumity White」は720mlで4000円、ホワイトリカーで漬け込んだ「Plumity Black」も720mlで3000円もする。

 有本農園の有本陽平さんは、コロナ前は年に3、4回上京し、一度訪れるごとに日本百貨店で3日~4日間の対面式での実演販売を実施していた。リモート実演販売に切り替えてからは、基本的に土日に販売を行うようになり、現在の売り上げ増加につながっている。