わたしたちはいま、スマホの普及に伴う情報過多とコロナ禍によって多くのストレスを日常的に抱え、「いつも疲れている」「なんとなくダルい」といった「脳の疲れ」が原因の症状が出やすくなっている。
そこで読んでおきたいのが、シリーズ累計28万部を突破しているベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』だ。イェール大で学び、精神医療の最前線である米国で長年診療してきた精神科医・久賀谷亮氏が、「脳疲労」を解消できる「科学的に正しい」脳の休め方をストーリー形式でまとめた本書から、今回は一部を抜粋・編集し、ネガティブな感情に打ち勝ってストレスを解消するための「3つのステップ」についてご紹介する。(構成/根本隼)

【精神科医が明かす!】ストレスを抑えてポジティブな感情を育てる「3つのステップ」とは? Photo:Adobe Stock
【ストーリーのあらすじ】脳科学を学ぶために米イェール大学に渡ったナツ(小川夏帆)は、厳しい競争環境にさらされて挫折する。研究への復帰を目指し、伯父が営むベーグル店〈モーメント〉を手伝うことにするが、店のスタッフは疲れ切っていて職場の雰囲気は悪かった。ナツは店を立て直すべく、ヨーダにそっくりな外見のイェール大教授(ラルフ・グローブ)を訪ね、脳と心を休める「最高の休息法」マインドフルネスの極意を教わる。>>第1回から読む

ポジティブな感情を育む3つのステップとは?

 ナツは〈モーメント〉の暗い雰囲気を生み出しているスタッフの顔を思い浮かべると、どうしてもネガティブな感情が湧き上がってきてとまらなくなった。ナツは包み隠さずそのことをヨーダに告げた。 

 ヨーダ「なるほど、では今日はメッタという方法を教えるとしよう。これは慈愛、つまり人に対する愛情と慈しみを内面に育てる方法じゃ。もっと簡単に言えば、ポジティブな感情を自分の中に育てる技術と言ってもいい」

 ヨーダの説明によれば、メッタは3つのステップから成る。

通常のマインドフルネス呼吸法(注)を10分続ける

(注)マインドフルネス呼吸法…椅子に座って目を閉じた状態で、身体の感覚を意識しながら呼吸を行ない、「現在」に注意を向ける。
詳細はこちらの記事▶ストレスや不安を解消したい人は必見!シンプルなのに効果的な「心のストレッチ」とは?

自分が慈しみたい人を心にイメージし、それによって起こる身体の感覚や感情の変化に注意を向ける

その人に向けて次のようなフレーズを心の中で唱える
・あなたがさまざまな危険から安全でありますように
・あなたが幸せで心安らかでありますように
・あなたが健康でありますように

メッタを身につけると、ネガティブな感情に打ち克てる

 ヨーダ「UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)などでもメッタを教えるプログラムがはじまっておるぞ。愛情、慈しみ、やさしさ、共感、寛容、喜び、感謝などを育てるのに、このシンプルな方法が役立つことがわかっておる。脳科学的な裏づけも進んでいて、メッタが後帯状皮質の活動をかなりリアルタイムに低下させることも明らかになっとるんじゃ」

「ポジティブな感情は、ビジネスに限らず人間関係、教育、政治、外交、スポーツなどさまざまな場面でプラスに働くことがわかっておる。そして何より、妬み、怒り、絶望のようなネガティブな感情を打ち消し、不眠やストレスを改善する。〈モーメント〉のみんなのことを考えながら、メッタを続けてみてはどうじゃ?」

 半信半疑ではあったが、科学的な裏づけも進んでいると聞いて、ナツはとにかくやってみることにした。脳に可塑性がある以上、脳の活動に影響のあるものを続けていれば、何かしら自分に変化が起きても不思議ではない。何より、これ以上ネガティブな感情に支配されるのはごめんだ。明日からメッタを取り入れてみることにしよう。

(本稿は、『世界のエリートがやっている 最高の休息法』から一部を抜粋し、編集したものです)

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