日産Photo:123RF

日産自動車の上場子会社である日産車体に対し、親会社から役員を受け入れる「天下り」の禁止を求める株主提案が出されたことが10日、分かった。ダイヤモンド編集部の調べでは、天下り禁止の株主提案は昨年の株主総会以降5件目。背景には親子上場に対する少数株主らの不満があるが、問題を重く見た東京証券取引所が実態把握に動きだしたことも新たに判明した。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

日産車体の歴代社長は自動車出身
物言う株主が「天下り」禁止要求

「当社の業績は親会社の自動車の販売動向に大きく依存する状況にありますが、親会社およびそのグループ企業との人的・技術的交流は、当社の効率的な経営と体質の更なる強化に貢献しております」

 東京証券取引所の上場会社は、親会社などの支配株主が存在する場合、「支配株主等に関する事項」の開示が義務付けられている。昨年6月、日産車体が適時開示した同事項にはこう記されている。

 日産車体の親会社とは、日産自動車のことである。日産車体は1951年以来、日産グループの一員として小型商用車を中心とする車種を受託生産する。東証プライム市場に上場しながら日産自動車が株式の50%を保有する、いわゆる上場子会社だ。

 日産車体が言う「人的交流」の象徴が、長年にわたって日産自動車から送り込まれる役員だ。現社長の吉村東彦氏は、日産自動車の追浜工場長や常務執行役員などを経て2020年6月に社長に就任。現在、日産車体の社内取締役4人のうち、吉村氏ら3人が日産自動車出身だ。

 日産車体によれば、日産自動車から受託する自動車開発や製造の売上比率は連結で98%超に上る。名実共に日産車の販売に依存した会社であり、従って親会社からの役員受け入れは「効率的な経営と体質の更なる強化」に資するというのが日産車体の言い分だ。

 だが、長年にわたるこの慣習を「天下り」だとして公然と異を唱える株主が現れた。

 実は、こうした提案は昨年の株主総会以降、日産車体以外の複数の会社にも突き付けられている。そして東証自身も今年に入り、情報開示が不十分とされる親子上場の実態把握に乗りだしたことが分かった。

 次ページから、天下り禁止の株主提案を受けた企業リストと共に水面下の動きを詳報する。