毒親の母が62歳で認知症に、シングルマザーが介護・子育てで悟った正解とは写真はイメージです Photo:PIXTA

仕事を続けながら介護や子育てをするワーキングケアラー、子育てをしながら介護をするダブルケアラーの人たちが研さんした技術は、ビジネスの現場でも生かせる。具体的なケースからその神髄を学んでいこう。第4回は、“毒親”である母を介護しながら出産し、ダブルケアに奮闘するシングルマザー、松永さんの事例だ。(ライター・グラフィックデザイナー 旦木瑞穂)

“毒親”である母が
突然、前頭側頭型認知症に

 2016年5月、関東在住の松永泰子さん(仮名・30代)は、電話で突然、「お母さんが認知症なのですぐに来てください!」との連絡を受けた。

 電話の相手は医師だった。母親は、「めまいがする」といって同じ病院を3日連続で受診していたのだ。おかしいと思った医師がMRIを撮ったところ、前頭側頭型認知症が判明。父親は仕事中で電話がつながらず、急遽、長女である松永さんにかけてきたという。

 当時、母親は62歳。

「母はもともと普通じゃないところがあったので、認知症に気付くのが遅れました。私が小学生の頃は普通だったのですが、だんだん更年期障害なのか、『成績が悪い』とか『部屋が汚い』とか難癖をつけては、私を殴ったり罵倒したりするようになりました。多分、過干渉が行き過ぎた“毒親”だったと思います」

 父親は家にいないことが多く、子育ては母親に任せきりだった。松永さんには2つ違いの妹がいたが、気が強く、弁が立つので要領良く逃げることができた。しかし、松永さんはうまくかわせず、母親の期待を一身に背負い続けた。

 松永さんが高校生の頃は、“松永さんが化粧の練習をしていた”という理由だけで母親が突然たたいてきた。部屋やゴミ箱を勝手に物色し、「これはどこで買ったの?」とか、レシートを見て「何でこんな所まで行ったの?」などと質問攻めにされたという。

 大学卒業後、就職活動の時には口を出すだけでなく、娘のスカートを突然めくって下着のチェックをすることもあった。