バブル期にもよくあった
利食い売りによる“激震”

 5月23日に日経平均で前日比1143円安の大幅下落となった株式市場の“激震”は、翌日にも上下の値幅が1000円を超える乱高下を演じ、さらに週明けの28日にも469円安と“余震”が続いた。

 暴落の初日には、中国の経済統計の悪化などが一応の材料として挙げられたが、主な原因は「利食い売りの集中」に尽きるだろう。

「期待」のレベルから日経平均で8000円台からスタートしたアベノミクス相場は、調整らしい調整を経ずに、ほぼ一本調子で1万5000円台まで駆け上っていたので、何かのきっかけがあれば、利食い売りが集中して大きく調整してもおかしくはなかった。

 大まかに言うと、株価水準が1万円のときに株式を買った人も、1万1000円のときに買った人も、1万2000円のときに買った人も、いずれも「儲けを確定するために売りたい」と思っていたはずで、これにきっかけが与えられると、彼らの売りが集中する。

 加えて、上昇した株価で買った人のストップ・ロス(損切り)の注文や信用取引で買っている人たちの証拠金不足に伴う売りなどを巻き込んで、下げ幅が拡大する。

 急落相場のこうしたパターンは古典的なものであり、1980年代後半のいわゆるバブルの時期にあっても、上昇相場の途中に、今回のような急落局面がときどき節目をつくりながら推移することがよくあった。

 急落があると、株価はしばらく上昇ペースが鈍り、あたかも地固めをするかのように下値を固めつつ、再び上昇してやがては高値を更新する、といった動きが典型的だ。

 アベノミクスと共に株式投資を始めた人の場合、政策が株価上昇を目指しているのだから、政策が目標とする水準まで株価が上がり続けて当然と思う向きもあるかも知れないが、ときどき今回の急落のような調整局面がある方が普通である。