日雇い派遣大手のグッドウィルが7月末で廃業となり、次なる関心は同業大手のフルキャストの動向に集まっている。

 そのフルキャストで、労働者が待遇改善を求めて、本格的に動き出そうとしている。同社の正社員や派遣社員らが加入するフルキャストユニオンは8月30日、「社員の待遇改善を求めて総決起集会を行なう予定」という。
 
 グッドウィルは昨年4月まで、「データ装備費」という名目で派遣労働者から不透明な天引きを行なっていた。そのため、グッドウィルユニオンは過去の天引き分の全額返還を求め、グッドウィルと激しく対立した。

 一方、同じく「業務管理費」と称する天引きを行なってきたフルキャストでは、派遣労働者への返還をいち早く決めたため、フルキャストユニオンとグッドウィルユニオンの上部団体である派遣ユニオンの批判の矛先は、主にグッドウィルへと向けられてきた。

 だが、「フルキャストはいまだに業務管理費を請求した人にしか返還していない。不当な天引きをした以上、すべての対象者に返還すべきだ」(関根秀一郎・派遣ユニオン書記長)と不信感を募らせる。フルキャストユニオンでは今後、天引き問題に加えて、集合から始業時間までの賃金の未払い分の支払いや、一部の派遣先から徴収している「エリア手当」の派遣社員への還元などを同社に要求していく構えだ。

 日雇い派遣業界は厳しい逆風にさらされている。大手の不正が相次ぐなか、今秋の臨時国会では労働者派遣法の改正により、1ヵ月未満の短期派遣は、日雇い派遣も含めて禁止される見込みだ。

 こうしたなか、フルキャストは中長期の人材派遣事業への移行を進めている。グッドウィルの廃業直前の7月28日には、今秋をメドに純粋持ち株会社へ移行する方針を発表。日雇い派遣事業で傷ついた信用の回復に躍起だ。

 だが、経営環境は厳しい。今年度第3四半期(同社は9月決算)までの連結業績は、本社移転費用や店舗閉鎖損失などによる特別損失が発生したこともあり、2億4000万円の最終赤字に転落(前年同期は8億6000万円の黒字)。売上高も前年同期比約1割減の745億円となった。

 グッドウィルは今年1月、労働者派遣法で禁じられている港湾作業に労働者を派遣したことにより、厚生労働省から事業停止命令を受けた。同じくフルキャストでも昨年8月、港湾作業に労働者を派遣したことで事業停止命令を受けている。

 派遣ユニオンでは、「フルキャストでは違法派遣と疑わしき行為も散見されている。問題が見つかれば、厳しく追及していく」と目を光らせる。労使交渉のなかで、仮にも違法行為が発覚すれば、同社への影響は甚大だろう。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 松本裕樹)