「ヤミ金の利用はやむをえないという利用者も1割程度存在するなど、問題点も浮き彫りになってきている」

 改正貸金業法の完全施行を6月に控えて、徐々にその影響が見え始めた。冒頭のセリフは3月1日の大阪府議会での西脇邦雄議員の質問に対する商工労働部長の答弁だ。大阪府では現在、貸金業に関する実態調査を行っており、その途上で「やり過ぎ」ともいわれる貸金業法改正の問題点があらわになっているのだ。

 完全施行に伴って、貸出残高は収入の3分の1までとする総量規制が導入され、上限金利は現行の29・2%から15~20%へと引き下げられる。もともと貸金業法の改正は多重債務者問題を解決するための措置だったが、上限金利引き下げや総量規制は、貸し出しの急速な絞り込みを前倒しで引き起こすといった皮肉な現象をもたらしている。

 下のグラフにもあるように、消費者金融大手7社の新規貸し出しの成約率は昨年12月に過去最低の28%を記録。資金繰りに窮した一部企業が融資をストップしているという面もあるが、多くは6月の完全施行に向けて融資基準を引き上げていることが原因だ。アコムの場合、2月の成約率が39%であるのに対し、6月以降は厳格に基準を導入するため、30%程度に落ち込むことになるという。

 既存利用者への影響もある。消費者金融の利用者は現在1000万人程度いるが、「そのうち半数の約500万人が総量規制に抵触する。6月以降、追加融資が受けられないことに初めて気づく人が続出するだろう」(大手消費者金融幹部)。完全施行に伴う混乱は非常に大きい可能性があり、「6月パニック」までうわさされる始末だ。

 政府の貸金業制度に関するプロジェクトチームは12日に完全施行することを決定。ソフトランディングのための施策を打ち出したが、それでは間に合わない可能性もある。「世界でも希に見る厳し過ぎる法律」と呼ばれる改正貸金業法が、景気のさらなる悪化のきっかけになりかねない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)

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