注目すべきは欧米ではなく
中国、韓国の企業

 日本には他国から学ぶことで成長してきた脈々とした歴史がある。しかし、バブル経済の崩壊後、この学びの姿勢が欠落しつつあるように感じる。

 古くは、中国や韓国から、政治/社会システムを学び、それを日本流にアレンジして活用した。明治維新では、岩倉具視使節団による情報収集とそれに基づく知見を基礎として、欧州各国から多くを学んだ。近代的な日本企業の基礎は、このときに確立されている。その過程では、お雇い外国人を登用し、各種の技術知識を吸収した。

 第2次世界大戦後には、戦勝国、とりわけ、アメリカから多くを学んだ。品質管理や事業部制もその代表的なものである。統計的品質管理を学んだ後に、それが品質を向上させる活動ではないことに気づき、QCサークルや提案制度などを通じて、全員参加の品質向上活動であるTQCへと昇華させた。事業部制についても、部分最適的な行動を各事業部がとる危険性に気づき、本社に権限を残しながら事業部の活動を大きくは制限しない、わが国独自の事業部制組織を生み出した。

 そのときそのときの最先端から、素直に謙虚に、そして、どん欲に学び、学習を通じて認識された問題に対して、わが国の風土に合うような解決策を考案し、巧みに活用してきたのである。このような地道な学習と経験の積み重ねこそが、そして、それのみが最先端に立ち、その位置を堅守するための王道である。このことを、私たちはいつの間にか忘れているようだ。

 日本企業の躍進が誰の目にも明らかになり始めた時、人まねを極端に嫌うアメリカでさえ、日本から謙虚に学ぼうとした。その活動の詳細は、『Made in America―アメリカ再生のための米日欧産業比較』(草思社、1990年、原著は1989年出版)に記述されている。