今年6月にスタートした「日本を元気にする経営学教室」は、読者のみなさんから好評を博した。連載から半年を経た区切りとして、執筆いただいた4人の先生方にお集まりいただき、座談会を行った。4名とも日本を代表するビジネススクールの現校長または前校長のみなさんである。
テーマは「日本企業の現場は本当に大丈夫か」。日本企業の強さの源泉は、戦略は大したことがなくても、製造、営業、研究開発などのそれぞれの現場において、問題発見の能力、問題解決に向けた提案力や、対応力が高いことにあると考えられてきた。
だが、いま相次ぐ欠陥製品の出現に代表されるように、競争力の源である現場の力が落ちていることが懸念されている。いま、現場では何が起こっているのか、現場の力を再興するには、どのような視点が必要なのかを、縦横無尽に語っていただいた。
座談会は3回連続。第1回目は、現場に対する現状認識と現場の力が落ちてきた要因について議論する。(司会 ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)
日本の「現場力」は大きく低下
低下に対する危機感も欠ける
司会 企業の現場における、問題発見能力や問題解決能力を「現場力」という言葉で表すとすれば、われわれはまだ日本の現場は強いと思っているフシがある。本当にそうなのか。最初に、現在の日本の現場をどう見ているか、現状認識から議論を進めてください。「現場力」の提唱者でもある、遠藤先生から。
遠藤 日本の会社の特徴がどこにあったかというと、欧米に比べると卓越した目を見張るようなリーダーが数多くいたわけではない。では、どうして評価されていたかというと、製造現場にしても研究開発にしても、現場に高い当事者意識があって、自分達が会社を支えているという意識を持った集団の力が存在していたことにあると思う。「現場力」という組織力が弱ってしまったら、たぶん日本企業の根幹をなす競争力を失ってしまう、というのが私の問題意識です。